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【コラム】海外通信員

ヤンマー&セレッソ大阪とレッドブル・ブラガンチーノのパートナーシップにワクワクが止まらない(後編)

[ 2022年8月30日 20:00 ]

レッドブル・ブラガンチーノ(提供写真)
Photo By スポニチ

 『日本サッカーの未来のため』と70年近くこのスピリットを受け継いできたヤンマーだが、今から46年前、1975年にヤンマーがブラジルに遠征に来ていたことを知っているだろうか?(大野美夏=サンパウロ通信員)

 凱旋帰国したネルソン吉村と日本を代表するストライカー釜本を要したヤンマーは当時アデミール・ダ・ギアというクラッキ(スーパープレーヤー)のいたパルメイラスとサンパウロ市内のサッカー聖地と言われるパカエンブースタジアムで1万7千人の観衆を集めて試合をした。結果は6-1でパルメイラスの勝利に終わったが、初めて日本人のサッカーというもの目の当たりにしたブラジル人たちの中に一人の日本人の少年がいた。

 その13歳の少年は、この試合を観てヤンマーファンになり、日本に帰国後もずっとヤンマーを応援し、現在はセレッソのサポだ。セレッソサポ歴47年の森哲男さんは、アカデミー育ちの2人に大きな期待を寄せる。

 「レッドブルつながりでの移籍&練習参加ですが、パートナーチーム契約締結のご祝儀的な扱いではなく モリシが 若手の頃 サンパウロF.Cの練習に短期参加して、チームスタッフに『このチビすごいな』と言わしめ獲得の打診されたのと同じように実力を認められ、すこし先になってもかまわないのでトップチームで出場の機会を獲得できるぐらい成長し帰ってきてほしいと思います。ブラガンチーノ!二人につばさを授けてやってください!」とエールを送る。

 ブラジルのトップチームの公式戦でプレーすることは簡単なことではないが、もう昔とは違う。今の日本のJ1の選手だったら、不可能ではない。

 「まずは、ブラガンチーノのトップチームで起用されるようになること。今、18歳だけど、世界を目指すには21、22までに欧州移籍して、目標は日本代表、W杯優勝。ライバルはバルサのペドリ。同い年で刺激になっている」(岡澤選手)

 と頼もしい言葉が出てきた。

 ブラガンチーノの育成部のトレーニングセンターはサンパウロ市内から車で1時間半かかる周囲に何もない不便なところだが、翻ってみれば静かでサッカーと自分に向き合うのにぴったりの環境だ。サバイバル感あふれるブラジルでプレーする中で、日本の便利で恵まれた世界では使われなかった未知の感覚が体の中から湧き上がってきたらおもしろいことになりそうだ。ゴールへの嗅覚、さらなる武器を身につければ一味も二味も違ったエッセンスを持った選手になれるだろう。新たな岡澤像が作られることを期待する。

 岡澤選手の目標をブラガンチーノで実現したブラジルの英雄からこんなメッセージをもらった。

 冒頭で紹介した元ブラジル代表、94年W杯優勝のボランチ、マウロ・シウヴァだ。マウロはブラガンチーノからセレソン、欧州、そしてW杯優勝を実現した。現在は、サンパウロサッカー協会で副会長を務めブラジルのサッカーをさらに発展させるために日々邁進している。そして、日本にとても強い繋がりを持っている人物だ。

 「ブラガンチーノは僕のサッカー選手としてのキャリアを作ってくれた恩のあるクラブで、この度のヤンマー、セレッソ大阪とのパートナーシップは、互いがこれまでの経験や情報の共有をして、みんなが更なる成長につながることを期待する。ブラジルは日本移民の多い国なので、ブラジルと日本の関係がさらに深まることはとても嬉しい。私自身、妻が日系2世(父親は愛媛県出身)で息子達には日本の血が流れていて、日本に対して特別な愛情を持っているから、ブラガンチーノが日本と強固な関係を結ぶことは大歓迎だ。ブラガンチーノはチアーゴ・エスクーロCEOの下、今やブラジルでも有数の最先端の経営モデルを実践しているクラブだから、ヤンマーとのパートナーシップ契約は更なる飛躍につながるだろう」(マウロ・シウヴァ)

 レッドブル・ブラガンチーノの経営トップのチアーゴ・スクーロは、大学でスポーツビジネスを専攻し、FIFA、欧州サッカー連盟、CBF(ブラジルサッカー連盟)のクラブマネージメントコース、ハーバードビジネススクールのメディア&スポーツ講座を修了するなど国際レベルの豊富な知識で新しい時代にマッチしたクラブ経営をして、これまでにブラジルサッカー界の最優秀CEO賞を受賞している若干41歳の敏腕CEOだ。ブラジルサッカーの変革に一端を担っている。従来のブラジルのサッカークラブは社会的団体で会長は無報酬の名誉職が多かった。そのため、経営もセミプロ的なところが残って、選手のサラリーが遅れる、支払われないこともざらにあったし、今でも起こっているクラブがある。選手という人材に不足はないのに、クラブ運営がブラジルの最大の問題だ。しかし、近年、クラブ、もしくはサッカー部門の企業化が叫ばれ、変化が始まっている。

 ブラガンチーノはレッドブルが買収したことによって完全に欧州資本のレッドブル本社がコントロールする企業になった。これまでと異なるビジネスプランで経理、戦略、運営、そして、透明性が求められ、国際的観点の短期、長期に渡った計画及び戦略がチアーゴ・スクーロの下、行われている。

 現場で言えば、ブラジルのサッカー文化は結果が悪ければ監督をすぐにクビにするが、レッドブル・ブラガンチーノは、長期計画に則ったプランを推進するため、3試合ほどの負けではすぐに解雇しない。平均22,3歳の若い選手を起用して、一緒に成長しているところだ。すぐに結果は出ないことは承知で、ブラジルサッカーにおける刹那性という価値観を変えようとしている。

 今後、ブラジルでトップ5のクラブになること、そして、南米で成功を収めること。そのためには新設のホームスタジアム、最新のトレーニングセンターが必須。すでに土地は用意し、建設を待つばかり。それらは、地域の活性化の街作りにもつながることになる。レッドブルというブランドを定着させ、クラブも会社も街もサポーターもWin Winになることを目指している。

 最後に、マウロから岡澤選手に対してアドバイスをくれた。

 「ボランチはチームのコラソン(心臓)だから、攻守に渡ってのキーマン。自分の役割を理解し、相手のチームの研究をして自分がどう動くべきかを常に考えないといけない。

 バルサのシャビ、イニエスタなどからもわかるが、ボランチはフィジカルが特別大きくなくてもいい。大事なのは自分のテクニックを磨くこと戦術の理解力を高めること。監督がどういうチームを作りたいかに合わせて、高いレベルのテクニックがあれば自分の役割を全うすることができるから。

 18歳ならまだまだこれから色々な段階を経て成長していくところだ。自分もスペインで13年間プレーして、多くのことを身につけブラジルとスペインの両方の強みを持った選手になった。ブラジルで違うサッカー文化を吸収して、同時に自分の良いところを見せて、互いが成長できるようになって欲しい。とにかく自分の最大限の努力を惜しまないこと。サンパウロ州サッカー協会に来てくれたら、一緒にコーヒーを飲んで話そう!応援してるよ」

 この『ブラジル×ヤンマー×セレッソ×レッドブル×ブラガンチーノ=?』

 化学反応にエキサイティングな展開にワクワクが止まらない。

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