【コラム】海外通信員

ブラジルxアルゼンチン戦突然の中断(上) 乱入者登場

[ 2021年9月13日 21:30 ]

ピッチに入ってきたブラジル政府の保健当局、連邦警察と話し合うアルゼンチン代表主将メッシ(10左)とブラジル代表MFネイマール(10右)
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 9月5日のカタールW杯南米予選ブラジル対アルゼンチン戦で前代未聞の試合中断事件が起きた。このカードはどんな大会でも、どんなシチュエーションでも、世界中が注目する超お宝カードだ。ましてや、今回、メッシがPSGに移籍してネイマールとチームメイトになってから初めての代表チームでのライバル対決とあり、世界中のサッカーファンがワクワクしながらこの試合を待ち望んでいた。(大野美夏=サンパウロ通信員)

 サンパウロ市内コリンチャンスのネオキミカ・スタジアムで戦いの火蓋は落とされた!はずが、開始9分でいきなり乱入者登場!

 え?一体何が?とテレビの実況アナまでが大慌てしていた。

 ピッチに入って来たのは、ブラジル政府の保健当局であるAnvisa(アンビザ=国家衛生監督庁)と連邦警察だった。Anvisaは国家の公衆衛生管理のトップであり、Covid19対策で検疫措置、ワクチン接種を実行する国家機関である。

 一体なぜ?

 Anvisaと連邦警察はウエストハム所属のGKエミリアーノ・マルティネスとMFエミリアーノ・ブエンディア、そしてトッテナム所属のDFクリスティアン・ロメロ、MFロ・チェルソの計4人の身柄を確保し連行した。うち3人は試合に出ていた。その場でConmebol(南米サッカー連盟)、CBF(ブラジルサッカー連盟)、AFA(アルゼンチンサッカー協会)は抗議をしたが、結局試合は中断、そのまま再開されることなくサスペンションとなった。

 色々な情報が飛び交ったが、9月12日現在わかっていることは以下のようになる。結局のところ、行き着くところは政治問題につながる。

 話を遡ること、8月13日。セレソンのチッチ監督はカタールW杯南米予選のチリ、アルゼンチン、ペルー戦のためメンバー召集をした。

 ところが、8月24日、プレミアリーグ(以下PL)は英イギリス政府が指定する「レッドリスト」に該当すると発表した。ブラジルもアルゼンチンもこのリスト国に入っており、選手たちは帰国後、10日間の隔離が義務付けられる。すなわち、PL2試合、UEFAコンペティション1試合、リーグカップ3回戦に出場できなくなるという影響を考えれば、選手派遣を拒否するという結論に達したわけだ。FIFA(国際サッカー連盟)のインファンティノ会長はジョンソン英首相にW杯予選という特別なケースの特例措置を求めたが緩和の許可はされなかった。

 このため、8月27日、CBFは9人のプレミア組を断念し代わりのメンバーを呼んだ。PLの選手はアリソン、エデルソン、チアーゴ・シウヴァ、ファビーニョ、フレッヂ、ホベルト・フィルミーノ、ハフィーニャ、ヒシャリソン、ガブリエウ・ジェズスだったが、大幅な選手の入れ替えになり、主要選手無しに戦うことを余儀なくされた。

 これまでFIFAは各国政府と交渉をして様々な特例の恩恵を受けてきたが、今回、英国政府は自国の検疫と国民の安全を優先した。CBFもそれに従うこととした。

 しかし、アルゼンチン代表はPLの4人を起用することにした。アルゼンチンのストラテジーは、4人は3試合でなく2試合のみで切り上げ、直接英国に返さず隔離義務の無いクロアチアで10日間練習を続けて英国に戻り、すぐに試合に出るという条件でクラブと調整をしたのだ。

 そこまでは、良かったのだが、問題は、ブラジルへの入国だった。

 現在、ブラジルに入国する際、過去14日以内に英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)及び南アフリカ、インドに滞在した経歴を有する渡航者は、14日間の隔離措置を講じなければならない。だから、アルゼンチン代表の4人はブラジルに入国はできるけれど、14日間の隔離義務があった。となると、試合には出てはいけないことになる。(続く)

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