【コラム】海外通信員

マンチェスター・シティーに学ぶ 現場に生かすためのデータ分析とは?

[ 2019年9月6日 13:30 ]

昨季、国内3冠(プレミアリーグ、FAカップ、カラバオカップ)を達成したマンチェスター・シティーのグアルディオラ監督
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 現代サッカーにおいて「サッカーとデータ分析」は、すでに切っても切れない関係にある。試合中のプレー成功率や傾向、選手のスプリント速度やその本数などのデータがコンピューターに一瞬のうちに落とし込まれ、試合中のデータでさえもその次の瞬間に現場に生かされている。

 しかしながら、データを取得すれば勝てるという簡単なものでない。マンチェスター・シティーを訪問しクラブスタッフから受けたプレゼンテーションによれば、データ分析官(パフォーマンスアナリスト)の仕事は大きく分けると4つある。対戦相手の長所と短所の見極めること、次のゲームに向けたトレーニングメニュー作成、トレーニングの動画分析、そして試合当日の分析であると言う。

 ヨーロッパのトップレベルの現場では、数年前からすでに常識となっており、ユース年代の試合でも分析は取り入れられている。しかしながら、そのコンピュータソフトで導きだされた数字をどのように読み取り、ピッチ上で活かすことができるかはソフト購入にいくら大金を積んでも仕方がなく、その数字を読み取るアナリスト(分析官)とそれに適応できる現場スタッフと選手たちの協力が重要になっていている。

 マンチェスター・シティーの現場を訪問した際は、驚きの連続であった。綿密な相手チーム分析から入り、対戦相手をイメージさせる練習メニューを組み、さらに翌日の練習で前日のトレーニング分析を行った上で修正に入る、シーズンを通じた改善ができているかを確認、試合当日にもその週に行ってきたものができているかチェックしているという話を聞いた。実際に訪問する以前までの想像でいうと、グアルディオラ監督がこれまでに培ってきた哲学とそのカリスマ性によって彼が描いているプレーイメージを選手たちが体現しているものだと思っていた。が、スター選手たちが練習前に10分間に編集されたビデオ分析を食い入るように見つめ、その後監督が熱弁してトレーニングに向かうところを見ると、こりゃ勝てる気がしないと痛感した。そこには、分析官と濃密なコミュニケーションが監督との間に存在していた。

 サッカーファンなどの更新しているツイッターなどを眺めていると、的確なプレー分析や戦術的な分析というものは存在している。と同時に、その分析する行為自体に満足してしまっているものが数多く散見される。しかしながら、分析とは試合に勝つための一つの手段であり絶対的な指標や価値観ではないという事実を忘れてはだめだ。フレキシブルに物事を捉え、一つの手段として捉え分析を行って行く事が重要である。手段のひとつである情報をプラットフォームに落とし込み、現場の人々がスムーズに情報を共有、結果に残していくことが求められている。

 そんな中、東ロンドンにベンチャー起業として設立されたIteproという会社でCEOを務めるマルコサヴィーノ氏にサッカー分析のプラットフォームの有効性の話を聞いた。?

 「私自身はスポーツ科学の出身で、これまでの現場で多くのデータを扱ってきました。選手のパフォーマンス、健康状態、GPSシステム、戦術スタッツ、メディカル要素、選手の成績など様々なデータを、決断する監督や首脳陣に伝えるわけですが、どのように伝えて、ましてや実行してもらうかは非常に難しい作業でした。ACミランとインテルがこのソフトウェアを実際に使用しているのですが、当時のガットゥーゾ監督にどのようにすれば、効率的なコミュニケーションが取れるかを考えて開発していきました。例えばですが、選手が朝起きた時に5つのシンプルな質問にアプリ上で回答します。その内容がすぐにメディカルスタッフに共有され、その日の朝のトレーニングメニューにすぐに適応可能です。選手がピッチにやってくる前に準備を進めることによって防げる怪我もあることは存在します。」

 毎日蓄積されていくデータを可視化、正しい情報を正しく伝えていくことで選手としての価値基準も定まり、クラブが求める選手像もわかってくる。それによって、獲得選手をスカウティングする際にもプラットフォームは活用されるだろうとマルコ氏は説明を加えてくれた。データ分析を通じたアプローチはJリーグ国内においても徐々に浸透しつつある。そんな中、様々なデータを整理し、現場スタッフや選手とコミュニケーションを円滑に進め、なおかつアイディアを落とし込むことができる人材が求められていることは確かだろう。(ロンドン通信員=竹山友陽)

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