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【コラム】海外通信員

怪我をしたネイマール、ロシアW杯に間に合うか?

[ 2018年3月1日 17:20 ]

マルセイユ戦で負傷したパリSGのネイマール
Photo By AP

 衝撃のニュースが流れた。ネイマールが右足首を捻挫し、骨にひびが入ったと。深刻な怪我でロシアW杯までに回復できるかどうか?

 2月25日、リーグ・アン第27節でPSGはマルセイユと対戦。ネイマールは2点に絡み活躍をしていたのだが、後半31分にサール選手と接触した際、自らバランスを崩し右足首をひねって転倒した。その瞬間、ネイマールは地面に転がり激痛に苦しみ泣き叫び、担架で運び出された。

 診断は、第五中足骨のひび。ひねった際に腱が強く引っ張られたことで腱とつながっている第五中足骨にひびが入ったというものだ。

 これにより、3月6日予定されているチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦セカンドレグ・レアル・マドリード戦には出られなくなった。

 逆転突破を目指すPSGにとって主砲ネイマールの不在は実に大きい。PSGはチャンピオンズリーグ優勝こそが目標であり、2億2200万ユーロかけてネイマールをバルサから獲得したのも全てCL優勝のためだ。

 昨年、セレソンの主砲が同じ箇所を怪我して、手術をしたことを思い出す。マンチェスター・Cのガブリエウ・ジェズスも第五中足骨の骨折で手術をした。

 今回のネイマールはガブリエウ・ジェズスよりも軽傷である。安静にしてリハビリという保全療法か手術と二つ可能性が取りざたされた。治療に関しての決定権を持つPSG、ブラジル代表、父親、本人の話し合いの結果、怪我から3日目の28日にPSGは公式に『ネイマールは今週末にブラジルでブラジル代表ドクターのホドリーゴ・ラズマール医師の執刀で、Gerard Saillant ドクター立ち会いのもと手術をすることに決定した』と発表した。Gerard Saillantは2001年に怪物ロナウドの足の手術を執刀したフランスの名医である。

 たとえ、保全療法で一時的な怪我の回避ができても、W杯直前に再び損傷することのほうが怖いので、今、手術で完全に直すことを選んだ。

 ガブリエウ・ジェズスは手術後2ヶ月半で回復したが、ネイマールは2ヶ月の回復期間が見込まれている。うまくいけば、ロシアW杯のひと月前には復帰できることになる。

 手術とはいえ、それほど過大な心配は必要ない。表面の傷はひと月ほどで癒え、内部の再生も2ヶ月で順調に進むだろう。

 2002年W杯の直前にも主砲ロナウドが膝の手術を受け、W杯本番ひと月前に復帰し、特別メニューをこなして初戦に間に合わせたということがあった。ブラジルにとってグループリーグは、まだまだ本気の範疇でないので、ロナウドは調整がてらプレーして徐々にリズムをあげていき、本番にピークが来る仕上がりに成功した。このようなケースを考えると、今の時点での手術は最悪のケースではないと言える。

 チッチ監督は、既にW杯メンバーのベースを決めており、ネイマールが要の布陣を起用するのは間違いない。3月23、27日に予定されているロシア、ドイツとの親善試合にネイマールが出られなくなったため、3月2日に予定されていたメンバー召集発表を急遽12日に延期した。チッチ監督としても貴重なテストマッチの作戦を練り直さなければいけなくなったところだ。ただ、必要は発明の母ということで、ネイマールなしの布陣、戦術のテストができるチャンス到来と考えればよい。W杯本番で、ネイマールを欠いた試合が出てこないとも限らない。そういう意味では貴重なネイマール抜き布陣のテストとなりそうだ。

 ただ、W杯には間に合うとしても、PSGにしてみると、チャンピオンズリーグの終盤にさしかかった大事な時に・・・と悔しい思い出いっぱいだろう。が、怪我は選手にとっていつやってくるかわからないものなので仕方ない。

 ネイマールにとってチャンピオンズリーグ優勝、W杯優勝、世界最優秀選手賞とこの3つを手に入れて、名実共にサッカー史にその名を刻むことが選手人生の目標である。今年はチャンピオンズリーグ優勝は厳しくなってきた。しかし、W杯優勝はまだチャンスが大いにある。W杯優勝の立役者になれば、最優秀選手賞も夢ではない。

 5代先まで資産は作ったネイマールにとって、今、喉から手が出るほど欲しいのは実績だ。マーケティング先行のプレーヤーという批判を跳ね返すのに、ネイマールにはW杯優勝しかないのだ。この2ヶ月の休養でメンタルを整え、コンディションを万全にして4ヶ月後には最高のW杯を迎えて欲しい。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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