【コラム】海外通信員

リベルタドーレスで浮き彫りになった問題点 無秩序さと一貫性の欠如

[ 2018年12月13日 15:30 ]

<リベルタドーレス杯>優勝を飾り、喜ぶリーベルプレート
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 リベルタドーレス決勝2レグが3度の延期の末にマドリードのサンティアゴ・ベルナベウで行われたことは、サッカーファンの間ではすでに誰もが知っているとおり。1―1のまま延長戦に持ち込まれるという激戦を経て宿敵ボカ・ジュニオルスに勝ったリーベルプレートは、南米チャンピオンに輝いてクラブW杯出場権を獲得し、マドリードからアブダビに直行した。

 試合そのものは見応えがあり、アルゼンチンから取材に訪れたメディア関係者によれば、地元スペインの人たちも存分に楽しんでいたという。ボカとリーベルの両チームのサポーターが入場できたこともあり(※本拠地ブエノスアイレスでは安全性の問題からアウェーチームのサポーターの入場は禁じられている)、それぞれが歌いながら相手を挑発して競い合うという応援合戦もゲームを彩る演出として効果を発揮していたこともスペインのファンを喜ばせたようだった。

 また、マドリード開催が決定してからもホームスタジアムの権利剥奪に断固反対の姿勢を貫きつつも、不戦勝を避けるため不満を抱えたまま出場した形となったリーベルが優勝したことで、南米王者決定戦を欧州で行うという前代未聞の決断を下して一斉に非難を浴びていた南米サッカー連盟にとっても好都合な結果になったと言って良い。

 試合前日にはマドリード市内で両チームのサポーターたちがそれぞれバンデラッソ(決起集会)を行なったが、懸念されていた暴動もなく、無事故で終わったことも大会主催者を安心させた。

 しかし、である。

 今回の一連の流れの中で、アルゼンチンサッカー界及び南米サッカー連盟を取り巻く様々な問題点が浮き彫りになったことは紛れも無い事実。「全てうまく行った」から「これで良かったのだ」で片付けるようでは進歩も発展もない。

 まず、延期の原因となったボカのバス襲撃事件についてだが、これにはアルゼンチンの全てのクラブが擁するバーラ・ブラバと呼ばれる暴力的サポーター集団が関与していたという説があり、筆者も真相はそこにあると考えている。試合の前日、リーベルのバーラがチケット転売を摘発され、多額の売上金を警察に没収されたため、「それを返さなければ試合を中止にしてやる」という脅迫が実際にあった。ボカの一行を乗せたバスが会場のエスタディオ・モヌメンタルに向かう途中、待ち伏せていた大勢のサポーターからコンクリート片やガラス瓶を投げられ、唐辛子スプレーを吹きつけられるという信じ難い襲撃の裏には、バーラのような犯罪集団の力と縁を切ることのできないクラブの切実な現実がある。

 そして、ボカの主力選手たちの一部が割れた窓ガラスの破片によって目に軽傷を負っていながら、放映権のホルダーやスポンサーの圧力から何が何でも予定日のうちに試合を行おうと強引な姿勢を崩さず、2度もキックオフ時間を遅らせた挙句、まず翌日、続いて10日後に試合を延期した南米サッカー連盟の弱さと曖昧さ、鈍い判断力も軽視してはならない。

 南米サッカー連盟は今大会において、各国のクラブからすでに厳しく非難されていた。選手の登録違反を犯した全てのクラブに対して共通した一律の処分を課さなかったこと、そして準決勝1レグで監督の出場停止処分を無視したクラブを失格、敗退にせよという対戦相手の抗議を聞き入れなかったことなどから不満の声があがり、しかもその全てにおいてリーベルが恩恵を受けた形となっていたため、アルゼンチンだけでなく、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイの強豪チームからも不公平さを指摘する批判が殺到していたのだ。

 バーラの存在に悩まされ続けるアルゼンチンサッカー界に、2年前から会長以下役員を一新して組織の浄化を目指しながらも無秩序さと一貫性の欠如が否めない南米サッカー連盟。リーベルの感動的な逆転劇で終わった決勝の感動を前に、1日では解決できない深い問題が忘れ去られるようなことがあってはならないのである。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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