奈良岡朋子さん死去 生前に遺していたお別れのメッセージ「裕ちゃんや和枝さんと遊びます」

[ 2023年3月29日 16:08 ]

奈良岡朋子さん
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 演劇界を代表する女優で、劇団民藝の共同代表を務める奈良岡朋子(ならおか・ともこ)さんが23日午後10時50分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。93歳。東京都出身。劇団民藝が29日、発表した。葬儀は近親者のみで26日に執り行われた。故人の遺志により、お別れの会は行わない。60年以上にわたり、舞台や映像の世界で活躍。多くの仲間、後輩から慕われた大女優だった。

 奈良岡さんは生前、亡くなった後に公開するためのコメントを遺していた。「新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます」と書き出し「裕ちゃんや和枝さんと思いっきり遊びます」と奈良岡さんを慕っていた昭和の2人の大スター、石原裕次郎さん、美空ひばりさんの名前を挙げた。

 60年を超える女優生活で多くの芸能仲間たちと親交を深め、後輩たちからは慕われた。舞台やTBSドラマ「おんなの家」シリーズなどでの共演が縁で、杉村春子さんにかわいがられたのは有名。石原裕次郎さんが「最も尊敬していた女優」と公言したほどで、裕次郎さんが勇退した人気ドラマ「太陽にほえろ!PART2」(日本テレビ系、86年11月~87年2月)で女ボス役で出演した。

 美空ひばりさんは大親友で、ひばりさんを本名の「和枝」と呼べた数少ない一人だった。また八千草薫さん、池内淳子さん、草笛光子(89)とはプライベートで「女の会」というグループを結成。さらに黒柳徹子(89)や若尾文子(89)、生前の山岡久乃さんや森光子さんとの親交も深かった。NHKドラマ「水色の時」で共演した大竹しのぶ(65)には実の娘のように接していた。

 民藝同期の大滝秀治さんが2012年10月に87歳で亡くなった後も劇団員たちの精神的な支柱であり続けた奈良岡さん。ライフワークとしていた一人語り「黒い雨―八月六日広島にて、矢須子―」を20年8月6日も新潟で上演。22年2月には渋谷パルコ劇場で朗読劇シリーズ「ラヴ・レターズ」に岡本健一(53)とともに出演するなど元気な姿を見せていた。

 ▽奈良岡さんのメッセージ全文は以下の通り
 新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます。向こうへ着いたらすぐに宇野さんを訪ねます。もう一度あの厳しい演出を受けたいと長い間願ってきました。でもね、宇野さん、私はあなたよりずっと長く生きて経験を積んできましたからね、昔のデコじゃないですよ。「デコ、お前ちっとましになったな」と言われたくてこれまで頑張ってきたんですから。腕がなります。杉村先生とももう一度同じ舞台を踏みたかった。どんな役でもいいからご一緒したい。ワクワクします。
両親にあいさつするのは二、三本舞台をやって少し落ち着いてからにします。それからは裕ちゃんや和枝さんと思いっきり遊びます。
これが別れではないですよ。いつかはまたお会いできますからね。それでは一足お先に失礼します。皆さまはどうぞごゆっくり…
                         奈良岡朋子

(注)宇野さん:宇野重吉さん、デコ:奈良岡さんの愛称、杉村先生:文学座の杉村春子さん、裕ちゃん:石原裕次郎さん、和枝さん:美空ひばりさん

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