小室哲哉、復帰へ思い語った――筒美京平さんの死にふれ「まだ僕にはやれることがあるはず」

[ 2020年10月23日 07:00 ]

笑顔でインタビューに応じる小室哲哉氏(撮影・吉田 豪)
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 2018年1月に引退宣言した音楽プロデューサー小室哲哉(61)が引退後初のインタビューに応じ、7日に他界した筒美京平さん(享年80)について「存在自体が金字塔。僕も自分が進むべき道がやっと見えてきた」と語り、復帰する意向を示した。引退の引き金となった不倫疑惑、妻でボーカルのKEIKO(48)との離婚問題についても初めて言及。「僕は澱(よど)んでいた」と真情を吐露した。(阿部 公輔)

 日本で最もシングルレコードを売ったのが昭和のヒットメーカー、筒美さんの7560万枚。最もシングルCDを売った作曲家が平成のヒットメーカー、小室の7184万枚。3位以下を3000万枚以上引き離したぶっちぎりの大記録。

 「筒美さんの記録は永遠に抜けない金字塔。レコードとCDの売り上げ記録だから、シングルという概念自体が薄らいだ令和のデジタル時代に追い抜くのは至難の業です」

 会ったことはない2人だが、筒美さんは生前「同じ洋楽のダンスミュージックを取り入れている」と共通点を見いだし、ヒットメーカーとしての嗅覚を評価。編曲家の売り上げ記録では小室が1位で、筒美さんが4位。小室は作詞家でも4位に入っており、全3部門でトップ5に入っているのは小室だけだ。

 「でも、筒美さんは作詞が先の“詞先”の依頼をやってのけている。これは凄いことで、一つのビートと決まったリフがあるダンスミュージックでは至難の業。僕は音やリズム、グルーヴ感を優先したから、そこを損なわない歌詞が必要だった。だから自分で作詞を始めたんです」

 “詞先”の依頼も苦にしなかった筒美さんの名曲群には「ヒットを作ることのみに徹した職業作家の技の跡がある」という。いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」。

 「この代表的な2曲は譜割りが均等じゃないんです。いしださんの独特の歌い方にそこを感じるし、木綿…は1番から2番、3番へと譜割りが微妙に変わっている。それは後から曲をつけているからだと思う。こういった条件や依頼者の意向も全部ひっくるめて調和させてしまう“アレンジ力”がズバぬけてる」

 小室は筒美さんの「先見性」にも驚いている。曲作りで大切にしていた「街やメディアの観察」だ。

 「メディアとは当時のテレビや新聞、今で言うならスマホの中にある世界を感じ取ることに注力していたということ。一方で、街の実風景も常に捉えようとしていた。これは現在のソーシャルメディアの時代に、より必要性が増していて、実際スマホの中ではその虚実がきれいに混在している。この虚実の橋渡しこそエンターテインメントの本質で、筒美さんは50年前に既に見抜いていた」

 技術革新により、価値観が激しく揺れ動く時代。そこにコロナ禍が重なった今、筒美さんならどんな音楽を作り出しただろう。

 「僕らの仕事は、作るか、人前で歌うか。この2つしかない。それがコロナ禍でその一つをもぎ取られみんなが苦しんでいる。でも、僕は自分の不始末で勝手に自粛している。3000曲作った筒美さんはやめるなんて言ったことがないのに、僕は1600曲しか作ってないのに一体何をしているのか…。まだ僕にはやれることがあるはず。それがやっと見えてきた」

 その答えは「音屋(おとや)」。作るのは歌でもなく、曲でもない。「コロナの時代だからこそ生まれた発想で、こんな自分でも誰かの役に立てるかもしれないと思えたのが一番大きいです」

 空間音楽に近い考え方で「教会のチャペルやパソコンの起動音のように、音で何かを伝えたり人々を導く、生活に役立つ音を作っていきたい。振り返ると、僕は小学6年の時に万博で冨田勲さんの音を聴いて衝撃を受けたのが音楽を始めた原点。“音屋”として胸を張って生きていけるようになりたい」。

 第1弾は、コロナ禍での不安やストレスを解消すると注目されているマインドフルネスの瞑想(めいそう)音楽。「漂う音という感じで、弾いている自分も無になれた感覚は初めてです」

 日本で最もCDを売った男の「これが最終章」。ターゲットはヒットを超えたところにある「日常」。生活に溶け込む「音」で人々にアプローチする。

 【新ジャンルを切り開く5曲】小室が作ったのは5曲。元エイベックス副社長の千葉龍平氏が創業したラッセル・マインドフルネス・エンターテインメントの瞑想アプリ「ラッセルミー」で一斉公開され、付記のQRコードをダウンロードすれば無料で聴くことができる。千葉氏とはエイベックス時代に松浦勝人氏とともに「TRF」をつくり、平成の音楽界をけん引した30年来の友人。千葉氏は「J―POPのフロンティアである小室さんに新ジャンルを切り開いてもらいたい」と言い、小室も「いろんな友情が自分を再起させてくれた」と感謝した。

 【「Get Wild退勤」に「凄い時代だな、と」】小室が作ったTM NETWORKのヒット曲「Get Wild」(87年発売)が、ツイッター上で大人気になっている。発端は、退勤時に同曲を聴く「Get Wild退勤」を試したという人の投稿。「めちゃくちゃ良い仕事した気持ちになるし何なら後ろの建物(会社)が爆破してる脳内妄想が起こってオススメ」との表現が、同曲がエンディング曲だったアニメ「シティーハンター」を想起させ、28万件の「いいね」が付くなど拡散された。小室は「拡散によってヒットが生まれるさまを見て取れる。凄い時代だなと思う」と感激している。

 【“不倫疑惑”と向き合う日々 当時の僕は澱んでいた】小室は引退の引き金となった不倫疑惑についても「なかったことには絶対にしてはいけないことなので」と語った上で、「当時の僕は澱んでいた。思いやりがなく、自分本位で…。愛情や友情というより、人としての手前の部分から逸脱していた」と胸中を明かした。
 看護師だった交際女性とは「もちろん、終わっていますし、医療的なことも含めてお会いしていません」。音楽家として再起するにあたり「この澱みがあった自分と常に向き合い、それでも誰かの役に立てる人になりたいという思いを日々確認していると、自分の中で浄化されているのを感じます。自分が手掛けていく音楽には、この浄化が絶対に必要だと思っています」。
 妻のKEIKOとは離婚調停に入っており「その後のフォローも含めて、全て自分本位だったことが招いた結果です」。KEIKOとも親しい元エイベックス副社長の千葉龍平氏によると「いまは順調に解決に向かっている」という。

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