球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“サイン盗み”から3年 元アストロズ首脳陣の復活劇

[ 2020年11月8日 05:30 ]

 ワールドシリーズ(WS)の終了を待っていたのがタイガースだ。6年連続プレーオフを逃し、新監督を探していたタ軍は、WS終了の30分後にA・J・ヒンチ氏(46)に電話し、2日間の面接交渉で監督就任を発表した。

 ヒンチ氏は、アストロズ監督としてWSで勝利した17年の不法サイン盗みで大リーグ機構(MLB)から1シーズン職務停止(球団からは解任)処分を科された。「いずれは球界に戻る有能な人材」と予想していたメデイアも処分明け直後の早業に驚いた。

 タ軍は“サイン盗み”の汚名を気にはしたが、ア軍5年の監督成績481勝329敗、WS勝利1回、リーグ優勝2回の前には小さかった。ヒンチ監督は最初の仕事を「全投手と一人一人面談する。ア軍と対戦した彼らは自分を被害者と思っているはず。私はなぜ不法行為を止められなかったか、選手がなぜ深みにハマったか、正直に伝える。それがスタート」。人柄が分かるコメントだ。

 アレックス・コーラ氏(45)のレッドソックス監督へのカムバックは既定路線だ。アストロズ時代はヒンチ監督のベンチコーチ、それで罪を問われた。コーラ氏は18年にレ軍監督就任1年目でWSを制した。MLBの1シーズン職務停止処分はレ軍監督就任2年後だ。コーラ氏は処分前に辞任したが、オーナーをはじめフロント陣とは「相思相愛」。涙の別れから1年、この間、地元ボストンの2つの新聞は事あるごとにコーラ氏の動向を伝え、カムバックの道づくりをやっていた。

 今季最下位。球団が監督候補7人と面談を続けるところにヒンチ監督のタ軍監督就任の報。「汚名は気にするな」となったのではなかろうか。心に傷を負った監督たちの復活。野球ロマンの典型、悪くない。(野次馬)

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