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【コラム】海外通信員

オランダ2位浮上 予断は許されず、余裕はない

[ 2016年11月18日 07:00 ]

<日本・サウジアラビア>前半、清武がPKを決め、日本が先制

 「我々は自分たちの立ち位置が分かっている。我々はそれなりのグループで、段階を踏んでいくことができる。そう、段階を踏んでいくんだ。人々は直ちに世界3位に入ることを期待することはできない」

 11月13日、W杯欧州予選A組のオランダ代表はルクセンブルグとのアウェーゲームに臨み、3-1で勝利した。上記は、試合後のオランダ代表ダニー・ブリント監督のコメントだ。オランダのサッカー雑誌フットボール・インターナショナル誌が試合直後にサイトで報じている。今年の夏に行われた欧州選手権本大会への出場を逃したオランダは、我慢強く、かつ謙虚に再建への道を歩んでいる。

 ルクセンブルグ戦に先立って、オランダは11月9日にベルギーとの親善試合を行った。結果は1-1だったが、リードした後半、5バックへと変更。”強豪”ベルギーの攻撃を1点に抑えて引き分けた。今のオランダにとってベルギーは格上。1-1という結果に手応えはあった。ただし、このベルギー戦で主力にケガ人が出た。FWフィンセント・ヤンセン(トットナム)とMFスタイン・スハールス(ヘーレンフェーン)だ。彼ら以外にも、そもそも今回招集できなかった主力がいた。右サイドバックのリック・カルスドルプ(フェイエノールト)だ。さらに主将格のケビン・ストロートマン(ローマ)は、累積でルクセンブルグ戦に出場できないため、今回は招集されていない。「継続性という点で問題がある」とはブリント監督。代表チーム再建途上にあるオランダだが、満足にベストチームが組めないままに、ルクセンブルグ戦を迎えることになった。

 ルクセンブルグ戦には、アリエン・ロッベン(バイエルン)とウェズリー・スナイデル(ガラタサライ)という2人のベテランがスタメンに名を連ねた。アリエン・ロッベンのゴールで先制。しかし、前半終了間際にPKを与えて、1-1に追いつかれた。後半開始からブリント監督はロッベンとスナイデルを下げて、代わりにスティーブン・ベルフハウス(フェイエノールト)とメンフィス・デパイ(マンチェスター・ユナイテッド)を投入した。この交代が的中、後半にデパイが2得点を決めて、3-1でオランダが勝利したのだ。

 ロッベンの交代は筋肉系のケガによるものだが、スナイデルは違う。「より攻撃的に行きたかったからだ。フィールドをワイドに広く使いたかった」とブリント監督は振り返った。この日、スナイデルが入ったポジションは4-3-3の左ウイング。今予選ですでにプレーしていたポジションだ。だが、押し込んだ展開になったルクセンブルグ戦ではウインガータイプ、つまりデパイを投入したという戦術的理由だった。

 この試合の後半、ベンチからロッベンとスナイデルが並んでベンチに座り試合を見守っていた姿は、現在のオランダ代表の現状を表していた。彼ら抜きで、オランダは勝てるようにならなければいけないのだ。

 「オランダ代表の一員であることはいまでも光栄に思っているし、満足している。できる限り手助けをしたい」と前置きしつつ、ロッベンはオランダ代表の現状を冷静に指摘した。「我々は現実的にならなければならない。オランダ代表は以前の我々がいたようなレベルでプレーしていない。選手たちに責任があるわけでも間違ったことをしているわけでもない。クオリティーだ。現時点ではクオリティーに問題がある。イニシアチブを取っていたとしても、難しい。ポゼッションで落ち着きがないんだ。ベルギー戦を見ただろう。守備的だったが、ポゼッションでも落ち着きがなかった。もっとスマートに、冷静さを保つようにしなければいけない」

 現在のオランダは、2010年W杯南アフリカ大会で準優勝し、2014年W杯ブラジル大会で3位になった時のような力はない。それはオランダの人々もすでに理解している。欧州選手権予選で敗退した時が、どん底だったのだ。今は、世代交代を推し進めて少しずつ再建しつつある若いオランダ代表を、時にため息をつきながらも暖かく見守っている。今回のルクセンブルグ戦で、マンチェスター・ユナイテッドでくすぶっていたデパイが活躍したことは、オランダ代表にとって大きな収穫だった。また、この日先発した20歳と若いMFバルト・ラムセラール(PSV)が精力的なプレーを見せたのもプラス材料。この日は出場しなかったが、FWフィンセント・ヤンセン、リック・カルスドルプといった若手が、確かに台頭してきているのだ。

 ルクセンブルグ戦に勝利したことで、オランダは勝ち点7に。勝ち点10のフランスが首位に立つグループAで、スウェーデンと同勝ち点の2位へと順位を上げた。とはいえ、まったく予断は許されず、余裕はかけらもない。危機感を持ち続けたままの戦いが続いていく。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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