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【コラム】海外通信員

ドイツ代表、オーダーメイドのキャンプ地!総工費は17億円

[ 2014年5月27日 05:30 ]

ドイツ代表のチームマネージャー、ビアホフ氏(左)とレーブ監督
Photo By AP

 W杯開催まで残り3週間。各地でW杯の準備が着々と(?)進められてはいる。工事がストップしている訳ではないのだが、スタジアム建設、インフラ整備、空港整備、道路整備などすべてが遅れ、相変わらずネガティブなニュースが続く。業を煮やしたのは、ブラジルW杯委員会のロナウド。

 2011年からW杯委員会に名を連ねるロナウドがロイター通信のインタビューにこう答えていた。

 「たくさんの時間を浪費してしまった。政府、州政府はもっと迅速に事を進めるべきだった。本来W杯の意義はとても大きいものなんだ。クイアバがW杯会場にならなかったら、あれほどの都市開発は進められなかっただろう。今まで行き届かなかったようなところにまで投資が行われるチャンスがW杯なんだ。すばらしいチャンスだったんだ。それなのに各政府は計画通り工事を進めなかった。2007年にブラジルがW杯開催国になった時、FIFAの要求する条件を全うすると約束したにもかかわらず、あー言えばこう言う、混乱ばかりで遅れていく。僕の愛する母国のネガティブなイメージが海外に流れているのが本当に残念で恥ずかしい。スタジアムはなんやかんやでも間に合うだろう。しかし、その他のW杯後に市民の財産になるべくインフラ、道路、空港などが非常に遅れている。これでは、まるでW杯自体が悪の根源のように人々は見てしまうけれど、そうじゃないんだ。だって、ブラジルはW杯を受け入れる前に最高にすばらしい国だったかい?W杯の前は、今と同じか、もっと悪かったかのどっちかだ。安全の面でブラジルに来るのは怖いという声を聞くけど、ブラジル人はW杯のために改善をしていて問題がないことをもっと伝えないといけない」

 ブラジル人のロナウドでさえ、頭を抱えている状況なのだから、外国人にとってハードルはいかに大きいか。

 FIFAがスタジアム建設でキリキリしているだけでなく、各代表チームもキャンプ地の整備を間に合わせるため必死だ。

 日本代表にもブラジル側で動いているスタッフがいるが、日本と比べてどれほど事が進まない状況にさぞかしご苦労されているだろう。もちろん、それは日本だけでなく、自国がきちんとした国なほど、アバウトなブラジルのやり方との摩擦、行き違いなどが出ているに違いない。しかし、何と言ってもキャンプ地は代表チームにとって疲れをいやし、戦力を整え、次の戦いに向かっていくための大事なW杯中のマイホーム。この準備が整わないチームは、ピッチでのパフォーマンスにどんな影響が出ることやら…。

 それを早くから懸念し、準備を整えてきたのがドイツ代表だ。ドイツは北東部のバイア州、ポルト・セグーロ空港から30キロのヴィラ・デ・サント・アンドレに新設された1万4千平方メートルのトレーニングセンターをキャンプ地にする。ホテル施設、練習場、宿泊所(14棟2階建、65室)、メディアセンターなどの施設がゼロから作られたいわばドイツ村だ。W杯のためだけに?と驚くところだが、ドイツサッカー協会は「あくまでもミュンヘンのいくつかの企業が投資したリゾート開発地に今回我々が初めて使用することになっただけだ」と説明する。バイア州には、このようなプライベートビーチを持ったリゾート地はいくつもあり珍しいことではないが、W杯のためにドイツが国を挙げて準備した最強のキャンプ地になるだろう。

 もちろん、それだけの規模の施設を急に作れるわけはなく、メルセデスベンツなどドイツ企業によって5年前からリゾート開発が進められ、そして、昨年の12月正式にキャンプ地が決まったところからさらに加速した。総工費は3500万レアル=約17億円という。通常、ブラジルは環境保護のため土地開発に煩雑な手続きをしてやっと許可が出る。これも工事の遅れの大きな原因の一つだが、今回のドイツ村は木を一本切るのさえ許可が下りるのに時間がかかる地域にも関わらず、練習グラウンドの建設にわずか2週間で許可が下りたという。

 ドイツ代表のチームマネージャー、オリバー・ビアホフは言う。「2010年W杯で練習場と宿泊所が近い方がいいと確信した。サンパウロ州やリオ州のように他の代表が集中している地域から離れたところを選んだ。ブラジルは大きな国だから少しでも移動時間を減らすことを重要視した」

 ホテルと練習場が同じ敷地内に隣接していることは日本代表にも共通しているが、W杯対策にとってとても重要なポイントだ。

 さらに、今回ドイツの試合会場はキャンプ地と同じ北東部に集中している。移動の疲れを極力減らし、同じ気候に体を慣らすこともできる。混乱のブラジルでオーダーメイドの専用キャンプ地を手に入れたドイツ。ブラジルの手強い相手になりそうだ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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