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【コラム】海外通信員

オランダ・エールディビジ 冬の移籍情報

[ 2017年1月5日 16:30 ]

 オランダのエールディビジは現在、冬の中断期間中だ。1月13日からリーグ戦が再開する。各クラブは1月2日から始動。それぞれトレーニングキャンプに入った。と、同時に1月と言えば移籍期間でもある。リーグ再開に向けてエールディビジに所属する日本人選手3人をめぐる状況と動向を確認しておきたい。

 ヘーレンフェーンには、小林祐希が所属している。2日から8日までスペインキャンプ。7日には、スペインの合宿地にて、ドイツのボルフスブルグと練習試合を行う。

 小林は昨年、半年間で13試合に出場。10月27日のカップ戦、FCアイントホーフェン戦でスタメン出場して後半28分に途中交代しているが、その時以降、途中のカップ戦含めて8試合連続スタメンフル出場中だ。ガッチリとスタメンの座を確保している。

 昨年12月、カップ戦が入るタイトなスケジュールの中にあってもスタメンフル出場が続いたことについて尋ねると、「そこには監督の信頼も感じるし。逆に層の薄さも感じるし」と、小林は昨年のリーグ最終戦ビレムII戦後に答えていた。「自分に信頼をしてくれているのかなと凄く自分では思っているけど、そこがどうなのか。(他に)いないから使っているのか、それともほんとに信頼してくれているのか。それはわからないけど、90分出ている、出させてもらっているんだったら、やらないといけない」

 ヘーレンフェーンに関しては、小林個人ではなく、主力流出によってチームが弱体化しないかどうか気がかりだ。例えば左ウイングを務めてきたサム・ラルソン。昨夏にも移籍するかと思われながら残留したスウェーデン人ウインガーだが、チームの勢いに乗ってリーグ前半戦だけで7得点5アシストを記録。あらためてその能力に疑いがないことを証明した。本人もステップアップへの意欲を表明しているだけに、さらに大きなクラブやリーグへと引き抜かれておかしくはない。

 また、スーパーサブとして途中出場から得点を決めてチームを度々救ってきた巨漢のヘンク・フェールマンも移籍の可能性が高い。本人もスタメン出場出来るチームに移りたいだろうし、獲得を考えているクラブは多い。彼らに関わらず、好調なヘーレンフェーンで目覚ましい活躍を見せてきた選手たちは、サクッと引き抜かれておかしくない状況なのだ。

 一方で、興味深い話も上がってきている。レアル・マドリードに所属するマルティン・ウーデゴーアがヘーレンフェーンにレンタルされる可能性が高まっているという。現在18歳で、スーパータレントとして注目されているデンマーク人アタッカーだが、レアルではさすがに出場機会に恵まれない。武者修行のためのレンタル移籍を模索する中、一時期はフランスのレンヌが候補の上がっていたようだが、話はまとまらなかったようだ。結果、元来北欧と強いコネクションを持つヘーレンフェーンが、この若手の成長のためには良い環境だろうということになりつつあるという。もし話がまとまれば、レンタル期間は1年半。

 小林は、主力が抜けるかもしれないチームにあって、主軸として中盤でチームを取りまとめることが期待される。そんな小林のハンドリングに注目だ。さらにウーデゴーアの加入となれば、小林とこのスーパータレントとの共演が楽しみだ。

 フィテッセには、太田宏介が所属しているが、状況は急展開を見せている。アレクサンダー・ブットナーがフィテッセに復帰しそうなのだ。

 アレクサンダー・ブットナーは現在27歳。フィテッセユース出身の左利きの左サイドバックだ。2007年から2012年までフィテッセのトップチームでプレーし、100試合以上に出場している。直後にマンチェスター・ユナイテッドに驚きのステップアップを果たした。当時、香川真司の同僚だったことから記憶にある人もいるかもしれない。ただ、マンチェスター・ユナイテッドでは出場機会を得ることが出来ず、加入から2年後にはディナモ・モスクワへと移籍した。昨季はベルギーのアンデルレヒトへとレンタル移籍されていた。そんなブットナーがディナモ・モスクワとの契約を解除し、フリーの身に。プレー機会を最優先してクラブを模索する彼の移籍先として急浮上したのが、古巣のフィテッセだったのだ。年末から年始にかけて、クラブ側と代理人側の話し合いは順調に進んでおり、まとまる可能性が非常に高い。

 まがりなりにもマンチェスター・ユナイテッドが獲得したくらいの実力を持つ選手であり、フィテッセ所属時代は人気選手でもあった。ブットナー復帰となれば、ポジションが完全に被る太田は出場機会を得ることが非常に難しくなる。1月2日付けのオランダ全国紙、”デ・テレグラフ紙”のサイト版でブットナーのフィテッセ加入の話がまとまりそうだという記事を出しているが、その中で『フィテッセは太田の移籍先を模索することになる。移籍金が入れば、クラブの財政の助けにもなる』との記載があった。ブットナーはトランスファーフリーだが、年俸が高いのだ。

 太田は1月2日から始まり7日まで続くフィテッセのスペイン合宿に帯同しているが、古巣・FC東京復帰も浮上している。

 ADOデンハーグには、マイク・ハーフナーがいる。クラブは1月2日から7日まで行われるスペイン合宿に向かったが、そのメンバーの中にハーフナーとルベン・スハーケンの二人はいないと、”デ・テレグラフ紙”等、オランダの複数のメディアが伝えている。報道によれば、二人は病気のために不在だということだ。

 昨年12月7日、”資金が必要なADOがハーフナーを移籍させる可能性。再び興味”といった記事が、オランダの全国紙”アルヘメーン・ダッハブラット紙”に載ったことがあった。『ADOからハーフナーが引き抜かれる恐れが出てきた。この日本人のストライカーは上海申花(中国)に興味を持たれている。そのクラブは、財政に苦心しているADOのストライカーを引き抜こうと考えている』という内容のものだった。記事によれば、上海申花は昨夏以来、ハーフナーに興味を持っていたという。

 上記の記事自体、どれほど真実味があるのかはわからない。ただ、現在、ADOデンハーグというクラブの筆頭株主は、中国人の王輝(ワン・フイ)。彼が会長であり、北京合力万盛国際体育発展有限公司(United Vansen)という会社を所有している人物でもある。昨年末からワン・フイ陣営と、オランダ人で構成されるクラブ役員会メンバーたちとの間で主導権争いが勃発しており、未だに継続中だ。クラブ上層部が落ち着かない状況の中では、ハーフナーに限った話ではないが、ADOの選手たちの動向自体、どうなっていくのか、まさに五里霧中だ。

 エールディビジに所属する3人の日本人の状況は、3者3様だ。ただ、いずれも、本人どうこうというより、本人が身を置く状況が大きく変化し、その流れに巻き込まれるという展開だ。ともあれ、なにかしら動きがありそうな1月ではある。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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