野村萬斎 「これでおしまい!?」 大河「どうする家康」今川義元役の本音

[ 2023年1月8日 21:00 ]

大河ドラマ「どうする家康」の今川義元役について語った野村萬斎(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】8日にスタートしたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)に狂言師の野村萬斎(56)が演じる今川義元が登場した。

 取材に応じた野村萬斎は「義元が説いた『王道』は家康の人生、物語の全般に影響を及ぼす理念で、二百数十年続く徳川幕府の礎になる。誇りを持てる役として演じた」と胸の内を明かした。

 この作品で今川義元は高貴な名君として描かれる。公家文化にも精通する教養人、政治家で、民のための王道政治を掲げる理想主義者という人物像だ。

 「家康の父親代わりという大きさを見せることを心がけた。義元は大きな目で家康、実の息子の氏真を見ている。実の息子にそこまで厳しいことを言うのか…という部分もあるが、国を治める責任を考えると、そのような非情な判断もあるのだと思う」

 義元が家康に黄金の甲冑を与える場面が印象的だった。

 「私が最初に撮影したシーンだったが、多くの共演者がいて、緊張感があった(笑)。あれは面白いシーンで、義元は二枚舌を使い、家康を戦場で目立たせるためにあえてあの甲冑を着せようとしたとも捉えられる。試練を与え、それを掻い潜ってこそ戦乱の世で生き残れるという考えだ。黄金の甲冑を見て、周りは『お~!』と感嘆の声を上げるが、家康は『これはもしかして、敵からも凄く目立つのでは…』というリアクションを見せる。そういうオチが生きるように、あの甲冑がさも素晴らしいものであるかのような芝居を心がけた」

 出陣の前に義元が舞う場面も印象的だった。

 「雅楽を基にしたものを能楽に引き寄せた謡と舞にした。他の作品でもそうだが、あのようなシーンは台本に詳細な説明がなく、こちらに任されるので、それが周囲にどういう影響を与えるかということを逆算して考える。今回は、士気を高め、自分たちには神がついていると思わせ、理想郷を感じさせるシーンになれば良いと思った。大きさ、スケール感が出るように心がけた。非常に呪術的に感じるシーンになったと思うし、監督たちも喜んでくれた。野村萬斎しかできない底力だと思っていただきたい」

 家康と氏真の剣術の稽古の際に手加減した家康を義元が怒る場面も印象的だった。

 「芸を相伝するのと同じような感じだ。間違ったことを野放しにすれば芸に表れる。わが子にとって不利になることでも、正しいことを説く。そこは共感できる」

 初回で描かれた桶狭間の戦い。歴史上、義元はここで姿を消すことになる。

 「これでおしまい!?とひっくり返りそうになった。義元の死にざまはみなさんの想像にお任せするが、その分、義元が理想として掲げた王道と覇道の違いに逆に焦点が当たる。今作の義元には、家康に理念を示す役割があり、脚本全体として国造り、平和国家への推移に重きが置かれていることに期待していただきたい。家康が幕府を作って行くプロセスに焦点を当てる時、それは義元のおかげだったという印象が残るといい。いよいよ幕府ができるという時、もう一回くらい登場できればいいと思っている(笑)」

 次回以降どのような展開になるのか注目される。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2023年1月8日のニュース