「どうする家康」今川義元初回退場!CP語る3つの狙い 古沢マジック炸裂“シナハン”生きた元康の恐怖心

[ 2023年1月8日 21:00 ]

大河ドラマ「どうする家康」第1話。 織田信長との戦に臨む今川義元(野村萬斎)(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は8日、15分拡大版でスタートした。主人公・松平元康(のちの徳川家康)の師・今川義元がいきなり“退場”する衝撃の展開。制作統括の磯智明チーフ・プロデューサー(CP)に狙いや脚本・古沢良太氏(49)の作劇の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河“初出演”にして初主演となる。

 第1回は「どうする桶狭間」。サブタイトル通り、初回から「桶狭間の戦い」(永禄3年、1560年)が描かれ、今川義元(野村萬斎)が討ち死に。織田信長(岡田准一)は義元の首を槍にぶら下げ、進軍。馬上から天高く槍を放り投げた。大高城への兵糧入れに成功した松平元康(松本)だったが、信長への恐怖のあまりガタガタと震え「どうしたらええんじゃー!」と絶叫した。

 義元の“初回退場プラン”について、磯CPは「古沢さんも僕もお互い、当初からそう思っていました。狙いは3つあります。1つ目は、これが家康の人生における最も大きな最初の“どうするポイント”だということ。家康の少年期も興味深いんですが、それはのちに描くとして、まずは初回のクライマックスに義元の討ち死にを持ってきました。2つ目は、家康の中で義元が生き続けるということ。古沢さんは家康がゆくゆく国づくりのことを考える時、義元の影響を強く受けている、と描こうとされていて、つまり初回は家康と義元の関係の終わりであり、始まり。それを一番劇的に印象づけるため、ドラマの入り口に設定しました。3つ目は、桶狭間の戦いを描くことでメインの登場人物が自然と集まってくるということ。これも物語のイントロダクションとして、ふさわしいと思いました」と明かした。

 信長に投げ飛ばされた少年時代の苦い記憶もインサートされ、元康は「あの男は、まともではない!わしゃ、よう知っとる。あれは獣じゃ、飢えた狼じゃ!」と戦慄。家康の少年期は今後、徐々に明かされる。「古沢さんも“順接(時系列順)の物語”だけでは、あまり面白くならないとおっしゃっています」(磯CP)という“らしさ全開のストーリー展開”となった。

 義元の影響については「王道と覇道は知っておるな」(義元)「武をもって治めるは覇道。徳をもって治めるのが王道なり」(元康)の問答で早くも一端が示された。

 大高城への兵糧入れからラストへの緊迫感は、シナリオハンティング(シナハン、脚本作りのための取材)から生まれた。古沢氏とスタッフは2021年5月から約半年、家康ゆかりの地を訪問。ほぼ全部を網羅した。

 劇中の3DCGでも描かれたが、大高城は当時、海に面していた。磯CPは「織田軍が周りに砦を造って取り囲み、いわば陸の孤島のようなもの。そこへ兵糧を入れることが、いかに過酷なミッションだったか。家康たちの差し迫った、抜き差しならない状況は、実際に大高城(名古屋市緑区)に登らなかったら、あれほどリアルに表現できなかったと思います。史料だけでは分からない、家康が目にした、感じた風景を追体験して、現地で歴史に詳しい先生にお話をうかがって初めて身をもって理解できました」と述懐。

 「しかも、大高城は桶狭間に近く(桶狭間古戦場公園も名古屋市緑区)、義元が討たれたことを家康はリアルタイムで知り得たのかということも、みんなで話し合いました。当時の天候は荒れていたので、事態を把握するのは難しかったんじゃないか、家康と家臣団は不安な時間を過ごしたんじゃないか、と。嵐が去った時、信長がそこにいるという家康の恐怖感も、現地に行って初めて想像できました。シナハンで議論したことが構想の幹になって、台本に肉付けされて、演出やキャストのアイデアが加わって映像になっていきます」

 今後もシナハンから着想を得た創作や新解釈、“古沢マジック”に期待したい。

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