【王位戦第4局2日目】藤井王位、豊島九段の「歩頭銀」に66分長考 封じ手は銀のタダ捨ての勝負手

[ 2022年8月25日 10:52 ]

豊島将之九段(左)の封じ手が立会人の木村一基九段(中)によって開封され、封じ手用紙に視線を送る藤井聡太王位(日本将棋連盟提供)
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 藤井聡太王位(20)=王将、竜王、叡王、棋聖含めて5冠=に豊島将之九段(32)が挑む第63期王位戦第4局は25日午前9時、徳島市の料亭「渭水園」で2日目が指し継がれ、豊島の56手目の封じ手は相手の歩の前に銀を打つ「歩頭銀」の勝負手だった。封じ手用紙に前日、豊島が書き込んだ封じ手が立会人の木村一基九段(49)から開封され、読み上げられると、木村九段によって両者へ示された用紙に藤井が珍しく視線を送って確認する場面があった。

 歩頭銀はつまり、相手の歩の利きに銀を捨てる指し手。銀を相手に与える代償に、手順にその背後にある自身の歩を進めることができる。「歩頭桂」は矢倉などの堅陣を崩すための手筋として終盤に現れるが、この歩頭銀が、藤井にとっても予想外だったことは開封時の様子からうかがえる。

 1日目午後6時の封じ手時刻。2分超過した午後6時2分、31分の考慮で指された封じ手の狙いは何か。

 藤井の予想を外した封じ手とすることで、午後6時から対局再開されるこの日朝9時まで約15時間、豊島だけその後の展開を読み進めることができる。もちろん食事、睡眠はとらないといけないが、そのメリットを重視した。一方で、藤井の予想を外しつつ有効でもなければいけないというハードルの高さは、史上4人目の「名人竜王」の豊島ならではではある。

 藤井はこの歩頭銀を歩で捕るという、至極自然な一手に1時間6分考えた。王を3段目に上がった51手目の1時間14分に次ぐ2番目の長考。豊島はその代償として歩を進め、60手目でと金作りに成功した。

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2022年8月25日のニュース