可“能”性は無限大!伝統と革新技術の融合に挑む男たち

[ 2020年7月9日 08:00 ]

「VR能 攻殻機動隊」を上演する(左から)谷本健吾、坂口貴信、奧秀太郎監督、川口晃平
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】人気、実力を兼ね備えた観世流の能楽師、坂口貴信(43)を3月、5月と取材する機会があった。

 まずは3月24日。練馬区の東映東京撮影所で行われた「スペクタクルライブステージ 神・鬼・麗 三大能∞2020」のリハーサルの模様を見学した。東京五輪開催中に外国からのお客さんに観てもらおうと企画された舞台。7月28日から8月8日まで東京・銀座の映画館「丸の内TOEI(1)」で上演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で五輪の延期が決定し、こちらも来年の仕切り直しが決まった。

 日本の伝統芸能「能」と最先端のCGを駆使した特設3面スクリーンを合体させた幻想的ステージ。「紅葉狩」のクライマックスを本番さながらに演じた坂口の所作に目を奪われた覚えがある。

 次が5月29日。千代田区にある稽古場にお邪魔した。敷居が高い印象がぬぐえない能の裾野を広げようと、BGMに洋楽を使ってみたり、最先端の映像とコラボレーションさせてみたりと、さまざまな試みを実践してきた坂口だが、今回は注目の新技術VR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)との融合舞台に挑む。

 8月22、23日に世田谷パブリックシアターで上演される「VR能 攻殻機動隊」がそれで、その企画説明会に足を運んだ。「攻殻機動隊」は士郎正宗氏(58)が1989年に発表した漫画。科学技術が飛躍的に高度化した21世紀の日本を舞台に、生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイドが混在する中で、犯罪を取り締まる内務相直属の「公安9課」の活動を描いた。

 押井守監督(68)のアニメ「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」(95年)をはじめ、これまで実写、ゲームなど多くの媒体で取り上げられてきたから読者の皆さんにもおなじみの作品だろう。

 能との融合を企画したのは「ペルソナ」シリーズなど舞台映像演出の第一人者である奧秀太郎監督(44)。「“攻殻機動隊”の中に出て来るエピソードを能でやれば面白いものが出来るのではないかとかねてより思っていた」と話し、3月の試演会で手応えを感じたという。VRメガネ無しで仮想現実空間を再現する画期的な能舞台に腕を撫す。

 出演陣も豪華。坂口はじめ、「沈黙の艦隊」「ジパング」などで知られる漫画家かわぐちかいじ氏(71)を父に持つ川口晃平(44)、谷本健吾(44)ら観世流の気鋭と、喜多流の大島輝久(43)らが満を持して舞台に上がる。

 「動画を配信したり、講座を開いたりも素晴らしいことですが、やはり演者としては、見やすいものというか入口、窓口を広げる上演形態を常に心掛けています」と坂口。その上で、「海外にも知られる題材を取り上げるのは意義のあること。能の斬新な表現方法が伝われば、能が初めてという観客の皆さんに今度は“本当の能はどういうもの?”といった興味を持っていただけると思います」と続けた。

 川口も「演技上ですが、われわれも役柄に添った能面を付け、装束を着て、自分の体を人形として扱う。そのへんが“攻殻機動隊”が持っているテーマと相通ずるところがあると感じています」と静かに燃えている。

 「いただいた脚本を川口さんが能の古語に直し、本来の能の形で未来の芝居をやるというのがポイント」と坂口は強調する。「能はもともと無駄なものを排除して抽象的に表現するのが得意だった。その抽象的にすることがわかりずらいということで、3D映像などを使ってやってきた。しかし、今回は映像の方も抽象的な世界を表現しているから、ひじょうにシンプルでおしゃれで美しい。新たな能の美をお見せできると思う」と強調。

 withコロナ時代の舞台。狂言方大蔵流の善竹富太郎さんが新型コロナウイルス感染に伴う敗血症のため4月30日に40歳の若さで亡くなった。坂口は「能役者の中にも死者が出ましたし、1年くらいは余波があるかもしれませんね」と語る。そんな言葉を引き継いで、奥監督は「コロナ時代の舞台をどうすればいいのか。いろいろなガイドラインがありますが、この演目に関しては最初から演者の皆さんもマスクをしている。どういうふうに客席を作るかを含め、新たな舞台の作り方を開発し、巨大な一歩にしたい」と意気込んだ。

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