「いだてん」は“でんでん現象”か?大河最低視聴率とネット好評&席巻“乖離”のワケ

[ 2019年12月18日 10:00 ]

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(C)NHK
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 15日に最終回を迎えた今年のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜後8・00)は、全47話の期間平均(全話平均)が8・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大河ドラマ史上初の1桁に沈んだ。2012年「平清盛」と15年「花燃ゆ」の期間平均12・0%を大幅3・8ポイント下回り、大河ドラマ歴代ワーストを更新。本放送(総合テレビ)の2時間前(日曜後6・00)に放送されているBSプレミアムも、「録画視聴率」とも呼ばれるタイムシフト視聴率も大苦戦した。一方、インターネット上の評価は高く、毎回SNS上を席巻。数字とネットが大きく“乖離”した今回の現象に説明がつきそうな言葉があった。「でんでん現象」とは――。

 歌舞伎俳優の中村勘九郎(38)と俳優の阿部サダヲ(49)がダブル主演を務めた大河ドラマ58作目。13年前期の連続テレビ小説「あまちゃん」で社会現象を巻き起こした宮藤官九郎氏(49)が大河脚本に初挑戦し、オリジナル作品を執筆した。来年20年の東京五輪を控え、テーマは「“東京”と“オリンピック”」。日本が五輪に初参加した1912年のストックホルム大会から64年の東京五輪まで、日本の激動の半世紀を描いた。

 「いだてん」は本放送以外も低迷した。BSプレミアムは本放送より早く内容を知れるため、大河ファンに人気。2016年「真田丸」は期間平均4・7%(全50話)最高5・8%。最終回まで10週連続5%台の驚異的な数字を叩き出した。本放送が待ち切れない視聴者が多く、ネット上で「早丸」の愛称で親しまれた。

 17年「おんな城主 直虎」も期間平均4・4%(全50話)、18年「西郷どん」も期間平均4・3%(全47話)と好調。しかし「いだてん」は一気に2・3%に落ち込んだ。

 タイムシフト視聴率は「録画再生率」「録画視聴率」とも呼ばれ、録画機器などで放送後7日以内(168時間以内)に視聴したもの。ビデオリサーチ社が16年10月3日から新たな視聴率調査を開始。録画機器の性能向上、スマートフォンなどを使用したスマートデバイスによるテレビ視聴など、多様化した視聴形態に即した視聴率算出が近年の課題だったが、検討を重ね「総合視聴率」「タイムシフト視聴率」を新しい指標として採り入れた。

 17年「おんな城主 直虎」はリアルタイム視聴率が平均12・8%、タイムシフト視聴率が平均5・0%。18年「西郷どん」はリアルタイム視聴率が平均12・7%、タイムシフト視聴率が平均5・8%だった。

 ビデオリサーチ社は毎週、タイムシフト視聴率の上位10番組を公式サイトで発表。ここまで今年48週のうち、「いだてん」がランクインしたのは6回。(1)初回(1月6日)=5・4%(2)第2話(1月13日)=4・5%(3)第12話(3月24日)=3・6%(4)第26話(7月7日)=3・8%(5)第37話(9月29日)=3・3%(6)第39話(10月13日)=3・5%。「いだてん」は「直虎」の5・0%、「西郷どん」の5・8%を下回る可能性が高い。

 “当たらない”と言われる“近現代大河”は86年「いのち」以来33年ぶり。チャレンジングな内容で識者の評価も高く、特に第39話「懐かしの満州」などは、五りん(神木隆之介)が志ん生に弟子入りするきっかけになった父・小松勝(仲野太賀)の形見の絵ハガキに「志ん生の『富久』は絶品」と書かれていた理由が明かされるなど、初回からの“壮大な伏線”を回収した。

 最終回も「#いだてん最高じゃんね」がツイッターの国内トレンド1位(放送終了約30分後)。毎回、複数の関連ワードでSNS上が賑わい、辛口の視聴者が多いYahoo!テレビの星取りも平均3・80点(5点満点)(15日午後8時時点)とネット上で熱烈に支持された。

 日頃、公表されている視聴率は「リアルタイムの世帯視聴率」。日本の人口ピラミッドの通り、年配層の嗜好に左右されやすく、視聴率と作品の評価は必ずしも直結しない。かく言う記者も「いだてん」を1年間、楽しく視聴した1人。お気入りのキャラクターは嘉納治五郎(役所広司)。その最期を描いた第37話「最後の晩餐」(9月29日)には涙した。

 しかし“興行”(視聴率)が失敗に終わったのも、また事実。16日に「大河ドラマ歴代ワースト視聴率」の原稿を書いたが、数字とSNSが“乖離”した理由について「でんでん現象じゃないか」と指摘する人が何人かいた。初めて知った用語だった。

 オンライン百科事典「ニコニコ大百科」などによると「最初(1話あるいは3話まで)は評判の悪かった、あるいは面白くないという意見の比率が高かったアニメが、回を追うごとに視聴をやめる者を出し、最後には絶賛する人だけが残り、結果的に外野からは評判が良いように見える現象」。テレビアニメ「伝説の勇者の伝説」が由来になっている。

 腑に落ちた。初回(1月6日)15・5%→最終回8・2%と視聴者は半減。賛否両論とはならず、ネット上で好評の声が大勢を占めたのも頷ける。記者もファンの1人として作品性や称賛の声は肯定しているが、明快な説明がつかなかった「いだてん」の視聴率とSNSの“乖離”は“でんでん現象”に近い気がしてならない。

 公共放送のNHKは「視聴率にとらわれず“攻めた作品”を作ればいい」という意見も散見された。ただ、1本数千万円~1億円とも言われる大河ドラマの莫大な制作費は、国民が支払う受信料だ。18日には木田幸紀放送総局長の定例会見がある。どのように総括するのか、注目したい。(記者コラム)

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