エンゼルス・大谷がスターの決断 二刀流完走へ本塁打競争不参加 背景&HRダービーの問題点は

[ 2022年7月16日 02:30 ]

本塁打競争の不参加を決めた大谷
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 大リーグは14日(日本時間15日)、オールスター戦(19日=同20日)の前日恒例の本塁打競争に出場する8選手を発表。昨年出場したエンゼルス・大谷翔平投手(28)は不参加となった。旬の話題に鋭く切り込む企画「マイ・オピニオン」の今回のテーマは、大谷の参戦が実現しなかった背景や本塁打競争の問題点について。スポニチ本紙大リーグ担当の柳原直之記者と奥田秀樹通信員が、それぞれの視点から持論を述べた。

 【柳原直之記者 故障リスク大 今季「大谷ルール」でフル回転】エンゼルスタジアムのメディア用食堂に設置されたテレビで大谷が本塁打競争に出場しないことを知り、胸をなで下ろした。複数の米メディアによれば、大谷は大リーグ機構から本塁打競争に招待されていたという。

 不参加の決断を支持したい。最大の理由は肉体的負担だ。13日に「なかなかハードだった」と語った昨年は初戦敗退ながら2度の延長戦を繰り広げ、計71回のフルスイング。舞台が標高1600メートルのクアーズ・フィールドだったこともあるが、「インターバル走みたい。ずっと振り続けているので。息が上がる感じ」と汗だくで振り返った。前半戦33本塁打から、後半戦は13本塁打と減少。ここでの疲労が原因で打撃フォームを崩したと指摘されることも多かった。

 さらに、今季から両リーグDH制と、先発投手が降板後もDHで出場を続けられる「大谷ルール」が導入された。球宴まで残り2試合の現時点と昨季前半戦と比べても打席数は31、投球回は20も増加。昨季前半戦は投手専念が3試合あったが、今季は登板15試合は全て投打同時出場している。来年オフにFAを控え、後半戦のパフォーマンスは重要。ネズ・バレロ代理人も気が気ではないはずで、シーズンをケガなく完走するためにも不参加は妥当な判断だった。

 前日、大谷は日米の報道陣から本塁打競争に関する質問を計3つ受けたが、出場可否に言及せず「光栄なことなので、頑張りたいなという気持ちはもちろんありますけど」と語った。ギリギリまで悩んだ末、万全の状態で後半戦に臨むことを優先したのではないか。

 【奥田秀樹通信員 選手もそっぽ向くショーアップ先行の現行ルール】現在、大谷(19本)よりも多く本塁打を放っているのは両リーグで15人。そのうち今回出場するのは3人だけで、ア・リーグは31本のジャッジ(ヤンキース)を筆頭に上位6人が不参加だ。ドジャースタジアムが舞台なのに、地元のドジャース、エンゼルスからもゼロ。このような状況を生んだ要因は、本塁打競争の現行ルールにある。ショーアップが先行しすぎて、選手の負担が大き過ぎるのだ。

 本塁打競争が始まった85年は10人参加の1ラウンド制で、優勝者はわずか6本だった。しかし、93年からテレビ放送され、98年からは生中継がスタート。球宴前日の一大イベントとなり、19年から優勝賞金は100万ドル(約1億3900万円)に増額された。

 近年はゲーム性がより強くなり、選手のスイング数が激増。14年までは一定のアウト数(本塁打以外)に達するまでの本数を争ったが、翌15年から持ち時間内での本数で競うようになり、飛距離に応じたボーナスタイムなども導入された。時間内はぶっ通しでフルスイングを強いられ、トーナメント戦を勝ち抜かなければならない。

 19年のゲレロ(ブルージェイズ)は現行ルールで史上最多の計91本の柵越えを放った末に準優勝。昨年は疲労蓄積を避けるために参加を断念した。今年は5月に痛めた手首が悪化するのを心配して「今は良い状態だけど、リスクは取りたくない」と打診を断った。

 人気イベントを長時間放送したいのは理解できるが、ファンが見たい選手が参加しなければ「真のホームランダービー」とは言えない。ルールを再考する時期に来ている。

 ▽本塁打競争ルール 1対1で、制限時間内に何本柵越えを放てるかを競う。1回戦と準決勝は3分、決勝は2分で、その間に1度、45秒間のタイムアウトが使用可能。475フィート(約145メートル)以上の本塁打を1本打てば、30秒間のボーナスタイムにさらに30秒が加算される。本数が並んだ場合は1分間の延長戦が行われ、決着がつかない場合は3スイング勝負を繰り返す。

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2022年7月16日のニュース