大船渡・佐々木の“球速抑制” 将来を見据えた判断に拍手

[ 2019年5月18日 09:30 ]

163キロ右腕の大船渡・佐々木
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 最速163キロをたたき出した大船渡の佐々木朗希投手(3年)は、4月に骨密度を測定し、160キロ超の球速で耐えられる骨、筋肉、じん帯ではないとの理由で、練習試合などでは球速を抑える投球をしてきた。

 それを過保護ととるかどうかは周囲の勝手。本人の考えだってある。ただ、そこまで選手のことを大事に考えてくれる指導者、高校野球関係者がいることを素直にうれしく思うと同時に、佐々木投手にとっても、将来を考えたら絶対にプラスになるものだ。

 PL学園の桑田真澄投手が甲子園で直球とカーブだけにこだわったことは有名な話であるし、横浜高の松坂大輔投手が安易に新しい変化球を投げれば、当時の渡辺元智監督から禁止令が飛んだことも知られている。桑田氏や松坂は、将来プロに入ったことも考え、安易に打ち取らないよう制限をかけた。佐々木投手は故障防止の観点からの制限ではあるだろうが、将来を見据えた判断という点では同じ。球速を抑える中で、どうやってやりくりするかを佐々木投手が考えられれば、将来のプラスにもなる。

 桑田投手や松坂投手に聞いたことがあるが「制限=加減する」ではない。「どこで力を抜くか。どこで力を入れるか。少ない手数の中でどう抑えるかは手加減とは違う」と巨人時代に桑田氏が話してくれたことがある。松坂は「限られた球種で無数の組み合わせ、打ち取り方を考えることは大事なこと。球速も抑えた中でどれだけキレを出せるかを考える必要があった」と話していた。

 時代の先を行く才能だからこそ、昭和、平成の超高校級のスター投手の言葉はぜひ、心に刻んでほしいと思う。佐々木は春季岩手大会を18日にスタートさせた。関東大会、そして夏の岩手大会、甲子園と公式戦が続く。どこかでリミッターを外す時は来るだろうが、その見極めは最終的には自分でしかできないことでもある。

 近年は全国の高校球児がウエートトレーニングも導入し、投手も野手もパワフルになった。だが、本当に骨格が固まり、成長が止まるのは20歳前後である。佐々木投手の局面での選択をしっかりと見届けたいと思う。それは、5年後、10年後の未来の日本野球界の教訓にもなる。(記者コラム・倉橋憲史)

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2019年5月18日のニュース