農薬が魚のいない川を生む?

[ 2019年2月5日 14:40 ]

デカアマを釣り上げた三浦さん(左)と蒔田さん
Photo By スポニチ

 公益財団法人日本釣振興会の環境委員会シンポジウムがこのほど、神奈川県内で開かれた。テーマは「農薬が日本の釣りを駆逐する!」。講師の筑波大学医学医療系助教(獣医師)の升秀夫氏は「川の水はきれいになったのに魚が釣れなくなったのはなぜか考えてほしい」と話した。 (笠原 然朗)

 童謡「故郷(ふるさと)」で歌われる「小鮒(こぶな)釣りしかの川」が危ない。農薬の大量使用が地球規模の生物多様性に影響を与えているという。

 升氏が「エビデンス(科学的根拠)に基づいて話す」と前置きした上で、取り上げた農薬が「ネオニコチノイド(以下ネオニコ)」系農薬。タバコに含まれるニコチンに似た成分をベースにし、その高い殺虫力と、効果が長く持続し散布回数を減らせるなどの理由から日本の農業現場では一般的に使用されている。農薬以外にもシロアリやゴキブリ駆除、ペットのノミとり用にも。

 「神経伝達の仕組みをかく乱するネオニコは、動物の摂食、吸汁、産卵などの行動を抑制する作用もある。農薬がまかれた田や畑から流れ出した水が川に流出することで(魚の餌となる)川虫も殺滅。昆虫の繁殖にも影響があります」

 そのことにより昆虫を食べるトンボやスズメが減少。「地球規模の生物多様性に影響を与えています」

 ネオニコに含まれる化学物質の摂取が多いと、ハチの方向感覚を狂わせ、巣に帰ることができなくなったりする。ミツバチの大量失踪や大量死の原因、という指摘もある。

 EU(欧州連合)では18年に3種類のネオニコ農薬のハチへの毒性を確認し、屋外での使用を禁止。ほかにも米国、ブラジル、台湾などでも使用禁止の動きが始まっている。

 ネオニコと並んで水田で使用される水草除草剤のアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害薬が河川に流入することで「河川の藻類の生産に影響を与える」。藻を食べて育つアユなどの魚への影響は?

 「水草除草剤を多用すれば(藻類が育たないため)水が透明な無機質河川が生まれます」

 一見きれいに見えるが、魚が棲めない川が増えることで「このままでは日本の釣りは絶滅する」と升氏は警鐘を鳴らした。

 そして川から海へ。「沿岸の海藻と海草が激減し魚が産卵場所を失い、海洋へ農薬が広まることを危惧している。ネオニコとALS阻害薬は、海水中の無機質と結合して構造式が破壊される(効力が弱まる)ことが期待できる」

 そして氏が導き出した結論は「日本の農業は農薬と化学肥料なしでは成り立たない。日本の釣り文化を守るためには魚類が棲息する水質を保全し、河川の富栄養化を進めるために雑木林、落葉紅葉樹林を少しでも増やすこと」。

 釣り人ならずとも、「農薬と自然環境」が提起する問題は大きい。

 <ベストショット>1月15日、大井川沖100メートルダチで。焼津市の三浦愛さんが釣った52センチ、1・5キロ、同市の蒔田ちづるさんが釣った45センチのアマダイ。三浦さんは焼津市の地域おこし協力隊の隊員だそうです。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る