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熟女と海 「月4」の本格派は「へたくそ」イシモチで竿頭

[ 2018年1月29日 07:14 ]

良型ゲット。この瞬間、栗田さんの頭の中にはコブ締めが
Photo By スポニチ

 【根ほり葉ほり おじゃま虫ま〜す】イシモチのメッカ東京湾、金沢八景。予報になかった小雨の中、鴨下丸が波を蹴立てていく。出船前、黙々と身支度中だった三鷹市・栗田裕子さん(53=会社員)の傍らに遠慮しつつおじゃま虫ました。(スポニチAPC 町田 孟)

 あともう少しで梅の便りも聞こえてくる。春を告げるのがメバルなら、おいでおいでと招くのはイシモチと言っていいだろう。昨年10月からスタート。ここへきていつもの浅場に集まってきている。梅雨が旬と言われるけれど釣期は長い。なにしろ手軽で味は上品。しかも船釣りの基本、こまめなタナ取り、誘い方を学ぶにはもってこい。そのせいか根強い人気がある。

 栗田さんの得意は「タチウオ」。逆にイシモチは「へたくそ」。なのになぜ?理由は簡単だ。本命が出船しなかったから。やむを得ずでも「やーめた」とならないあたりは「月に4回は通う」本格派らしい。ファッション志向の釣り女とは違う。

 「私なんてまだひよっこ。もっと上手になりたい、うまい人に近づきたい」。積極果敢。楚々(そそ)とした語り口からは想像できないのめり込み方だ。「自分が考えたことがその通りにできたときが面白い」。

 当たりを待つ間には、新しい仕掛けの点検をするなど動作も慣れた雰囲気だ。「趣味は他にこれといったものはないけれど、日常生活の一部と考えている」。虜(とりこ)を通り越していると言っていい。「一生付き合っていきたい」。そのための体力もつけたいともいう。

 キャリアは10年。会社の釣りクラブのキス大会に参加したのがきっかけ。その後「仲間から誘われるようになって」。生涯の“友”に出合ったわけだ。腕を上げるには経験と工夫が必要。だか、そのほかの効果も見逃せないだろう。「新鮮な魚が食べられることが何より」。現実的でもある。

 「非日常的空間がストレス解消になる」。釣り師たちからよく聞く言葉だ。栗田さんは「特別な思いはない。ただ海の上にいると気持ちが落ち着く」。探求心、向上心とは別の部分だ。知らず知らずのうちにセラピー効果に浴しているのかもしれない。

 食い渋った一日だった。高山将彦船長=写真=が「反応はあるんだけれど」と首をかしげるほど。そんな中、コツコツと数を伸ばして竿頭。料理は得意ではないと言いつつ「大きいのはコブ締め。中はホイル焼きに。小はつみれ汁もいいかな」。頭の中をレシピが駆け巡る。三鷹で2人の娘さんと3人暮らし。陸に上がり道具の手入れをしながら「おかげで魚が大好きに育った」。静かなる釣り熟女は、お母さんの顔になった。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、八景・鴨下丸=(電)045(781)8410。出船は午前7時半。乗合料金8500円(餌付き)。タチウオ船あり。

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