“外来は悪者”行き過ぎた報道でコイも駆除対象!?命の大切さ再確認を

[ 2018年1月27日 11:12 ]

昨年から釣りを始めた中村渚さんは多摩川のコイが大好き。今年もすでに65cmをフライで釣り上げた
Photo By スポニチ

 【釣遊録】各地で「かいぼり」がはやっているような報道が多くなりましたね。「かいぼり」のもともとの目的は、底にたまったヘドロを取り出して一回干し、池の浄化作用を促進させるためのものです。魚を飼っている人ならお分かりいただけると思いますが、水槽の水を交換して、砂利を洗ったりするのと同じです。

 目的は池の浄化でも、とっても楽しい魚捕り、それを子供たちに手伝わせて、日常生活ではまず経験できないことを体験させてあげるのは非常に良いことだと思います。生き物を捕獲する時、遺伝子のどこかにある狩猟本能が目覚めるため、子供の情操教育にもつながるからです。

 ですから単に楽しい魚捕り体験として行えばいいのですが、報道を見ている限り、お手伝いをさせる理由付けが変です。

 マスコミのインタビューに答えた小学生らしき子供がこう言いました。

 「外来魚を駆除して、池の生態系を守りたいです」

 そして怖かったのは「この魚は在来魚だから、生かします。こっちの魚は外来魚だから…」と水の入っていないバケツに入れて殺すのです。

 この場合の外来魚はほとんどがブラックバスやブルーギル。在来魚の生態を脅かすといいますが、人工池ではもともと生態なんてないのです。

 マスコミが面白おかしく報道すればするほど、「“かいぼり”して池の生態を守ろう」というお題目だけが先行していきます。そしてターゲットになる外来魚もこじつけられていきます。

 なぜなら日本国民に親しまれているコイまでが、移入コイと琵琶湖産の在来ゴイに分けられ、移入ゴイは池を汚す外来魚だ、などの理由で駆除対象になっていることです。あの元気な子供の象徴、こいのぼりのコイですよ。

 人間の都合だけで平穏無事に生きてきた魚類を殺すこと自体が、これまでに人工的に作り上げられた生態系を乱すことにならないのでしょうか?

 ブームがいつまで続くか予想はつきませんが、「かいぼり」主催者にお願いしたいのは、ねじ曲がった知識を教えこむよりも、命を大切にしよう、という生物教育に転換してほしいということです。

 ところで、私たちは相変わらずコイ釣りにハマっています。身近な多摩川でこれだけ大きな魚を戦略的に釣ることができるフライフィッシングです。わざわざ偽物で釣る理由は、餌釣りよりも一手間かけて釣る方が面白いからです。

 多摩川もタマゾンと言われ、熱帯魚の巣窟のようにいわれていますがそれは大間違い。もともとナマズの魚影が濃いために、アマゾンにも負けないほどだ、と称賛していたものがマスコミにねじ曲げられ、悪の川のように言われてしまいました。多摩川の在来魚を脅かすものは熱帯魚ではありません。保護されたために増え過ぎたカワウです。集団で川に飛来し魚を食べまくるその姿はエイリアンです。幸いにも大きく育ったコイはカワウに食べられないので安心です。

 都市近郊で人間の生活と密着した生態をもつ多摩川も、実は水槽と同じ生態を持っています。ろ過器と、ヒーターを備えているからです。人間が作り替えた生態の中で一生懸命生きている魚たちを、どうぞ外来魚と呼ばずに受け入れてください。 (東京海洋大学客員教授)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る