×

ラバーネットで優しくキャッチ 再会を楽しみに早速リリース

[ 2017年12月23日 07:37 ]

急流の中からヒットした銀ピカニジマスは降海型のスティールヘッドのような魚体。ラバーネットでやさしく扱いすぐにリリースした
Photo By スポニチ

 別に魚類保護を訴える気はありません。キャッチ&リリースするならなるべく魚にダメージインパクトを与えない方がいいと思うのは私だけではないはずです。その目的は、釣ったらなるべく元気な状態で水に戻すことです。生き伸びて成長し、またヒットしてくれるか、あるいは子孫を残してくれるかを期待したわけです。その昔、「大きくなってまたおいで」というキャッチフレーズで、リリースが推奨されたこともありました。

 私の師匠の故西山徹さんは「尺ヤマメを釣りたかったら29センチを逃がしなさい」と言っていたほどです。

 ラバーネットとは、魚をすくうランディングネットの網の素材がシリコーンラバーでできているネットです。

 このシリコーンが魚の表皮のヌメリがはがれるのを抑えるため魚に優しいのです。そこで最低のダメージにするためにラバーネットを使いたいわけです。

 すでに導入している人は、お分かりだと思いますがこのネットの効果は管理釣り場ですでに証明されています。

 私たちは多摩川でのコイ釣りやナマズ釣りにも導入していますが、自然水域におけるトラウトフィッシングではまだ浸透していないようです。

 魚を釣ったとき、リリースする予定の魚でもあるいはリリースが規則の場所でも、格好よく写真を撮りたい、大きさを測りたい、しばらく眺めていたい。ボートフィッシングなら生け簀(す)に入れて桟橋まで戻って釣れた自慢と釣果の証明をしたい。なるべく早くリリースした方がいいに越したことはないのに、矛盾と無知と経験不足も魚をどんどん傷つけます。

 未来のために、格好いい木枠のラバーネットがあればなあと思います。

 この話を11月に犀川に行ったときに、マス釣りの達人、須澤康一さんにした1カ月後、再度訪れた時には、彼がニコニコしながら「作りましたよ。これどうですか?」とスミス社の木枠ネットをラバーに交換したものを見せてくれました。魚を大切にする人はさすがに行動が速いですね。とても格好が良かったので貸してもらうことに。

 餌は今回もマグロの切り身を使用しました。

 目測で水深の1・5倍ぐらいのウキ下に調節して流します。オモリが川底の石に当たると一瞬潜りますがすぐに浮いて流れます。魚が食いつくと水中に没したウキが不規則に動くので分かります。

 当たりがなかった午前中2時間を過ごした昼食後、玉ウキが水中に没し、上流へ動きました。ロッドを立てると、強い引きが伝わります。

 感心するのは、流れに乗って下流へ泳いで行くことはなく、カナダのスティールヘッドのように、流れに逆らって上流へ泳いでくるところです。遊泳力に優れているのでしょう。放流魚でもそういう引きをしました。

 40センチぐらいの銀ピカ野生化魚は激流の芯でヒットしたので驚きました。スピード感あふれる引きで、磯竿をしならせ、須澤さんのラバーネットに収まりました。

 ラバーネットを使っていることが、魚に対して優しいというステータスになれば良いと思いました。 (東京海洋大学客員教授)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る