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【コラム】海外通信員

マンチェスターU完敗

[ 2011年6月10日 06:00 ]

欧州CL決勝で喜ぶメッシ(右)を横目に引き揚げるマンチェスターUのルーニー(左)
Photo By AP

 通算4度目となる欧州制覇の夢は、もろくも崩れ去った。

 アレックス・ファーガソン監督率いるマンチェスターUは、ロンドン近郊のウェンブリー・スタジアムでバルセロナに完敗。試合後のファーガソン監督も、「ここまで打ちのめされたのは初めて」と潔く白旗を上げた。

 試合はバルセロナの一方的な展開だった。出だしの10分間こそ高い位置からのプレスで試合の主導権を握ったが、10分を過ぎたあたりからバルセロナが挽回。バルセロナがボールポゼッションで上回るようになると、マンチェスターUは防戦一方の戦いを強いられた。27分に守備の隙を突かれて失点し、少ないチャンスをモノにして勝利に結びつけたいマンチェスターUはさらに苦しい情勢に。34分にギグスとのワンツーからルーニーが貴重な同点ゴールを挙げたものの、54分、69分と立て続けに得点を奪われ、1-3で試合終了のホイッスルを聞いた。バルセロナの選手たちが次々とトロフィーを掲げる姿を、ファーガソン監督は口を真一文字に結んだまま見つめた。

 試合後のミックスゾーンでも、記者の質問に一切応えず無言で通り過ぎるユナイテッドの選手は少なくなかった。先発で出場した朴智星もその一人。よほど悔しかったのだろう。現場に居合わせた韓国人記者によれば、「試合に敗れると納得のいかない様子で無言のまま去ることもあるが、あそこまで憮然とした表情を見せるのも珍しい」という。ハビエル・エルナンデスやナニが、それぞれメキシコ、ポルトガルといった自国記者のインタビューに応じていたのとは対照的だった。

 ただ、朴智星は今回のファイナルに並々ならぬ意欲を見せていただけに、こうした行動も理解できる。チェルシーと戦った2008年のチャンピオンズリーグ決勝では18人の登録枠から外れ、念願の先発出場を果たした翌年のファイナルでもバルセロナに0-2で敗れた。試合前、当時の心境について朴智星は次のように語っていた。

 「チェルシーとの決勝に出場できなかった時はとても落ち込んだ。準決勝ではプレーしたのに、決勝では登録メンバーにも入れなかった。ツラかったけど、それが監督の決断だったから仕方がない。09年の決勝では先発したが、今度は試合に敗れた。どちらの決勝がこたえたかは今でも分からない。ただ僕の目の前には、チャンピオンズリーグの決勝に出場して優勝するチャンスがある。実現すれば完璧だし、自分のキャリアにとって最高の一瞬になる」

 満を持して臨んだ今回の決勝。4―4―1―1の左MFとして出場した朴智星は、対峙したビジャやD・アウベスを抑え、機を見て攻撃にも絡んだ。中盤センターの守備が空けば、自らがカバーに入って補?。6分にはセンターFWのメッシにタックルを仕掛けてマイボールにした。こうした献身的な動きは、チームメートのDFパトリス・エブラをして、「朴智星が2人いると錯覚してしまう」ほど。豊富な運動量を武器に攻守両面でチームに貢献したが、「3度目の正直」となるチャンピオンズリーグ制覇の夢は叶わなかった。

 「バルセロナに追いつくのは容易なことではないが、挑戦を恐れてはいけない。来シーズンに向け、もっとチームの力を伸ばさなければ。この敗戦を糧に、チームをさらに成長させたい」と試合後のファーガソン監督は力を込めた。2年前の決勝もバルセロナに0-2で完敗。雪辱戦は来季以降に持ち越しとなった。(田嶋康輔=ロンドン通信員)

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