×

【コラム】海外通信員

女子W杯 アメリカ女子代表の強さ

[ 2011年5月27日 06:00 ]

米国代表との親善試合で米国選手と競り合う日本代表・MF阪口夢穂(右)
Photo By AP

 来月ドイツで開催される女子W杯に向け、アメリカ女子代表は14日、18日と連続して組まれた日本女子代表、なでしこジャパンとの親善試合をいずれも2対0で勝利した。
どちらの試合でも世界ランキング1位のアメリカ代表はなでしこを圧倒し、試合の主導権を握り続け、その実力を見せつけた形だ。今年に入っての戦績は8勝2敗。2敗は1月にスウェーデンに、4月にイングランドにいずれも1対2で負けたものだ。

 その強さの秘密はまず恵まれた体格にある。なでしこと比べると一回り大きい選手がほとんどで、球際にも強い。今回、競り勝って、突破に成功する場面が何度も見られた。特に攻撃の要となっているのがトップ下のMFキャリー・ロイド。28歳で108キャップ、代表通算27ゴールを挙げている。今年に入っても既に5ゴールでチームの攻撃を牽引する。パス能力にも秀で、背番号10を背負う。

 また、ボランチのシャノンも33歳という年齢を感じさせない運動量で中盤を支え、果敢に攻撃参加も行う。この2人が支配する中盤は圧倒的だ。さらに、なでしこ戦で2試合連続得点を挙げた女子サッカーのAロッドこと、Fエイミー・ロドリゲスは飛び出しのスピードに定評がある。調子を上げていることからW杯では活躍しそうである。

 では、そんなアメリカ代表の弱点をなでしことの連戦から見てみると、まず速いよせの組織的な守備に苦しんだところが挙げられる。ボールを持ってすぐ3、4人の選手に囲まれると、展開に苦しむ様子が見られた。ただ試合が後半になり、なでしこ側に疲れが出て足が止まってくると、怒濤の攻撃ラッシュをしかけている。相手チームはスタミナとの兼ね合いに頭を悩ますことになりそうだ。

 また、もう一つの弱点としてはバックラインの統率が今ひとつということがある。なでしこの速攻を許してしまい、決定的な場面を作られたり、引き気味になって中盤との間にスペースを作ってしまう場面が散見された。こうした点を丁寧につき、特に体格負けしないチームであれば、アメリカ代表に番狂わせを喰らわせるチームも出てきそうだ。W杯でアメリカは北朝鮮、コロンビア、スウェーデンとともにグループCに入っている。グループリーグ最終戦、7月6日のスウェーデン戦は今年土を付けられているだけに注目の試合となりそうである。

 なお、このなでしことの試合で着用されたアメリカ代表のジャージはチームの選手全員がサインをし、東日本大震災義援金として寄付するためのチャリティー・ネット・オークションに現在かけられている。21日の時点で既に1600ドルを超える値が付いたジャージもあるほどの人気ぶりだ。また試合前には「GANBARO JAPAN」と書かれたバナーを選手達が持ち、犠牲者への黙祷が捧げられもした。こうした応援には本当に感謝したい。(渡辺敏史=ニューヨーク通信員)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る