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【コラム】海外通信員

2011年シーズン 新旧入り混じり

[ 2011年4月6日 06:00 ]

コリンチャンス入団会見でご機嫌の元ブラジル代表FWアドリアーノ
Photo By AP

 2011年新シーズンが始まって三カ月。現在、州リーグの真っ最中、各クラブは軌道に乗ってきたところだ。

 先週、コリンチャンスにアドリアーノの入団が決まった。ここ数年、ブラジルと欧州を行ったりきたりして、今年3月に、昨年5月に移籍したローマから2年の契約期間を残しながら早期契約解除の通達を受けた。要するに、クビを言い渡されたわけだが、再び傷心の帰国したアドリアーノも、まだ29歳。ポテンシャルはあると信じるビッグクラブが獲得に乗り出した。サンパウロ市のパルメイラス、コリンチャンス、そして古巣のフラメンゴが名乗り上げた中、アドリアーノは故郷リオでなく、コリンチャンスに未来を託すことにした。大きなきっかけは、2月に引退した後も、コリンチャンスのアンバサダーとしてクラブとの関係を持っているロナウドの存在。ロナウドは、現在スポーツビジネスマネージメントの会社を経営しているが、自分がコリンチャンスに迎え入れられて成功だったように、アドリアーノもフラメンゴよりも経営が安定しているコリンチャンスで新たなスタートを切るのに一役買った(もちろん、ビジネス)。

 と同時に、アドリアーノはこれまで散々世話になってきた代理人ジウマールとのマネージメント契約を解除した。これについて、ジウマールは「父親と思って彼をサポートしてきた。アドリアーノは、まだ病気を抱えている。支えが必要なのだ」とアドリアーノの未成熟ぶりを心配する記者会見を開いたほどだ。

 さて、ブラジル国内では、両手を広げてアドリアーノを迎えたかといえば…、もう食傷気味。またか、という冷めたムードが漂っている。アドリアーノに関する、こんななぞかけまで出てきた。

- 来る前は大喜び、去るときも大喜びするものはな~んだ?

答え: アドリアーノ

- アドリアーノとかけて美人妻と解く。そのこころは?

 手に入れる前は、焦がれて欲しがるが、手に入れてからは、もうおなかいっぱい。

 コリンチャンスのサポーターは熱狂的で有名だ。ロナウドが引退したとき、なによりも感謝したのが、サポーターの熱い応援だったことからもわかる。アドリアーノのキャラがコリンチャンスに合うことは想像の範囲内だったのだが、サポーターの反応は、冷たいものだった。

 ローマで、出場5試合、FWなのに1ゴールしかマークしていないという事実に加え、メンタル問題を抱えているのでは、コリンチャンスサポーターも疑念を抱かざるを得ない。アドリアーノの入団を歓迎しない声が叫ばれ、入団会見の日、周辺でサポーターは締め出されていた。

 記者会見で、こんな質問が飛び出した。

質問 「あなたが、今抱えている病気はいったい何なのですか?」

アドリアーノ 「僕は今までいろいろな問題を抱えてきたことはみんなが知っての通り。でも、もう完治した。僕の病気といえば、家族だ。家族がないと生きていけない」

 リオに住んでいる母親、弟、祖母が記者会見に同席し、アドリアーノを見守っていた。サンパウロに引っ越すにあたり、彼らを一緒に連れてくるという。今度こそ、平穏な気持ちでサッカーに専念できるといいのだが。

 このコリンチャンスだが、2011年シーズンの補強として、長くポルトガルで活躍し帰化してポルトガル代表にもなったリエドソンを帰還させた。ロナウドとの2トップは実現しなかったが、アドリアーノとのコンビが期待される。

 さて、コリンチャンスの同市内のライバルクラブ、サンパウロFCも大物プレーヤーを連れ戻すことにした。W杯南ア大会のブラジル代表主砲、ルイス・ファビアーノだ。セビージャで約6年間、UEFAカップ2回を含む6タイトル獲得に大きく貢献して多くの思い出を残したセビージャでの退団会見では、涙ながらに感謝の言葉を述べた。遣り残したことはないと、もう一つの心のクラブ、サンパウロFCに帰還した。

 ベテラン勢の活躍に注目も集まる一方、もっと目を離せないのが若手の躍進だ。昨年から、サントスFCのネイマール&ガンソ(半年ぶりにケガから復帰したばかり)のコンビの注目は続いているが、ここにきて、人気急上昇のスターが現れ盛り上がっている。サンパウロFCのMFルーカスだ。今年2,3月に、ペルーで行われたU20南米大会でブラジルは優勝したのだが、その中心がルーカスだった。サンパウロに戻ってすぐさま、契約更新が行われ、ロナウジーニョに次ぐ、ブラジル第2位の高額プレーヤーになったのだ。

 1位のロナウジーニョの設定移籍金が200億円。ルーカスが93億円。3位のガンソが、58億円。ネイマールが45億円。一気に、ガンソ&ネイマールのサントスコンビを抜き去った。

 ルーカスは、3月27日にロンドンで行われたスコットランドとのフレンドリーマッチでA代表デビューを果たし、交代出場ながらも、ルーカスのプレーはダイヤモンドの原石の輝きを放った。そのスピード、そのテクニック、勘のよさ、センス、どれをとっても今後の大物振りが期待できる。

 ベテラン、ルイス・ファビアーノの活躍も期待されるが、それさえかすんでしまうだろうと言われている。

 新旧入り乱れの2011年シーズン。上記の彼ら以外の新たなスター選手の登場にも期待大だ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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