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【コラム】海外通信員

【アルゼンチンコラム】世界王者アルゼンチン代表の2024年と今後

[ 2024年12月19日 19:00 ]

アルゼンチン代表
Photo By スポニチ

 アルゼンチン代表にとって、2024年はポジティブでもあり、ネガティブでもあった年となった。「31年ぶりのコパ・アメリカ連覇」という偉業を達成して世界王者の面目を保ったチームに難癖をつけるわけではないが、アルゼンチン代表では過去、順風満帆に進んでいる時に持て囃される傾向の中で解決すべき課題が見落とされ、気づいた時にはもう遅く、一気にどん底まで落ちたことが何度かあった。31試合無敗の記録達成に酔い痴れた結果、ホームでコロンビア代表に0-5の屈辱的大敗を喫したアルフィオ・バシーレ監督のチームが良い例で、93年8月、あのショックを現場で体験した私としては同じことを2度と繰り返してもらいたくないという強い思いがある。現在チームを指揮するリオネル・エスカローニ監督とその指導陣にとっては百も承知のことだろうが、観る側の我々も、良い結果を残した時こそネガティブな面を軽視してはならない。

 アルゼンチンでは、W杯優勝から2年経った今も代表チームの支持率が全く衰えておらず、エスカローニ監督の人気もますます高まる一方にある。2019年半ばまでは逡巡が伝わる采配から酷く批判されていたが、就任から6年の間に4つのタイトル(2021年コパ・アメリカ、2022年フィナリッシマ、2022年W杯、そして今年のコパ・アメリカ)をもたらして状況を180度変えてみせた監督に対する人々の敬意は半端なものではなく、ホームゲーム前の選手紹介アナウンスで監督の名前が呼ばれると、リオネル・メッシやエミリアーノ・マルティネスといったスター選手たちに負けないほどの拍手と声援がスタジアム内に響き渡る。銀行やビール会社といった数々のCMにも主役として起用されていることも、監督の好感度の高さを証明していると言っていい。

 さらにエスカローニは、去る10月10日に行われたW杯予選9節の対ベネズエラ戦でアルゼンチン代表指揮数を80試合とし、歴代のW杯優勝監督である故セサル・ルイス・メノッティとカルロス・ビラルドの79試合を上回った。「メノッティとビラルドを超えた監督」という、アルゼンチンサッカー界における最上級の肩書きを物にしたわけだが、そんな彼の長所は人一倍謙虚な人格にある。タイトル獲得後も決して驕り高ぶることなく、主役の座は常に選手に譲り、自分はあくまでも裏方に徹するという姿勢は、全てのアルゼンチン人監督に見られるわけではない。

 そんなエスカローニ率いるアルゼンチン代表は、コパ・アメリカ優勝後、W杯予選で首位をキープしたまま2024年を終えた。1年に親善試合と公式戦(W杯予選とコパ・アメリカ)を合わせて16試合を戦い、戦績は13勝1分2敗。予選では2位以下が1ポイント差で混戦する中、12節修了時点で2位のウルグアイに5ポイントの差をつけており、得失点差は14点と断トツの状態にある。

 また、6-0と圧勝した10節のボリビア戦ではレアル・マドリード育ちのMFニコラス・パス(20歳)がA代表デビューを果たした他、ディエゴ・シメオネの三男でFWのジュリアーノ・シメオネ(21歳)をはじめとするユース代表出身の若手を都度積極的に起用する方針も継続。就任からすでに50人の若手を招集、うち49人をデビューさせたエスカローニは、「ポスト・メッシ」を見据えたチーム作りを着々と続けている。

 一方、アウェーで行われた8節のコロンビア戦で2-1と敗れ、4年前から維持していたW杯予選での無敗記録は11試合でストップ。11節のパラグアイ戦でも同じスコアで土がつき、アルゼンチンの人々は2ヶ月間に2試合も敗戦の悔しさを味わうこととなってしまった。国内のメディアやネット上ではコロンビアの決勝点となったPKに対する疑問、パラグアイ戦での主審のジャッジへの不満の声が上がったが、長年にわたって代表番を務める記者たちはこの2敗についていずれも「コントロールできていたゲームで追加点が奪えなかったこと」を指摘。攻撃力の高い選手を揃えながら突破口を見出せないシチュエーションについてはエスカローニ自身も「いち早く解決しなければならない課題のひとつ」と話している。

 人々から厚い信頼を寄せられる間は、一時的な結果に左右されることなく様々な戦術、選手を試すことができ、多少の失敗も許される。エスカローニがこの期間をフルに活用しながら、W杯優勝メンバーに若手を融合させた新しい基盤作りを成し遂げることができるかどうかに注目したい。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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