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野球好きの健司へ引退記念サービスやで

[ 2009年1月11日 06:00 ]

 奈良の大井健司(54期・45歳)が突然引退した。私は健司に「おまえ、人の引退の時に勝手に来とってからに何でおれに教えへんのや!」と怒りの電話をした。「おれごとき大層ですって。それに点数でクビになる選手に対して失礼やし…」。花の慶次のパチンコの秀吉みたいな恐ろしい顔をして、性格だけは一本筋が通ってて実に男前である。
 健司は平安高校時代、センバツで甲子園に出場。卒業するとスパっと野球を断念して父・清、兄・栄治を追って競輪選手になった。清さんは往年の大スター。栄治も順風満帆に父に近づいていたが、突如白血病にかかり28歳でこの世を去った。健司はSワンの点数が掛かっている大事な時期だったが、栄治の骨髄移植のドナーになり夢は立ち消えた。
 健司は年下だが私を平気でおちょくってくる。だからまともでまじめな会話をした記憶がない。とにかくつかみどころがない男だ。この前も「長い間お疲れさん」「あざーす」みたいな会話には絶対ならないのである。「一度は齊藤さんち行きますわ」「おまえが来るのはおれの葬式やろ!?」「えっ?何でそんなん分かるん!?」「いや、マジでもっと早よ来いや!」「了解です!ほなお通夜の時に…」と、総てこんな調子である。
 引退した夜、朝方まで啓世らとのんだそうだ。啓世は終始号泣しても健司は涙を見せない。その代わり自分のヘルメットを啓世に手渡し「これまで一番うまい酒や!」だけを言い、何回もゲロゲロしたそうだ。「大井家はおまえに任せたぞ…」。兄弟に言葉はいらぬ。そしてもう一回地元記念を優勝して、清・栄治・健司にあらためてお礼をしたいと啓世は心に誓ったとか。
 久々に描いた挿絵だが、競輪でないのは何より野球が好きだから。引退記念サービスで、実物よりかなり男前に仕上げてあり、フォームも種田もどきで実にカッコイイ。「肖像画として額装したいわ」と、今回ばかりは素直に喜ぶ健司の顔が目に浮かぶぜ(笑い)。

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