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横断幕にはファンの熱い魂が宿っている

[ 2014年11月1日 05:30 ]

 俺らがデビューした頃の競輪場をビジュアル的に思い起こせばそこはモノトーンの世界やった。選手がまとうハデなユニホームもあの冷たいコンクリートにかき消される。ダーティーなイメージは割合的な色不足が諸悪の根源。

 ふと気がつけば競輪場内も色鮮やかにデコレーション化され少しはマシになった。大型のオーロラビジョンもそやけど、一番は横断幕とちゃいまっか。

 この横断幕は普通、ご贔屓(ひいき)する選手の熱烈なファンが自腹切ってこしらえる。でもこれだけで終わりまへん。その選手が走る全国津々浦々の競輪場に毎回、宅急便で送り届けにゃいかん。もちろん往復料金添えてです。ほんまは自分自身が追っかけしたい。けど毎回そうはイカのキ○タマですわな。ならせめてものと、横断幕にはそんなファンの熱い魂が宿っている。1枚でも出れば大したもん。それがアッチにもコッチにも様々なバリエーションのが出まくってる選手ってホンマそれこそスターの証明。でも中には自作自演の選手もけっこう多いと聞いたことがある。

 俺? 2つまとめて仲のええ連れ何人かがカンパし合って作ってくれましたわ。俺、まるで子供のようにお披露目の日を指折り数えて楽しみにしてました。地元ホームバンクの甲子園。5メートル越え級の横断幕に挟まれて、幅1メートルぐらいのショボいものを見っけた。最初、最近独立したどっかの国の国旗か思うたわ。それぞれのキャッチコピーには“まぶしい頭ぃゃ脚”“アッチはテクニシャンなのに…”。それもペラペラのガーゼみたいな布切れときたもんだ。挙げ句のはてに5場所ぐらいで『めんどくせ~』とチャンチャン。ステキな悪友持ったオラー幸せだぁ~。

 横断幕の製作費は素材や大きさなどで値段はピンキリ。普通はターポリンていうテント素材で幅5メートルぐらい(重さは約3・5キロ)で5万円前後。ええもんなら10万円するやろな。パターンはど真ん中にフルネームかいて、周囲に“鬼脚”とか“若武者”などのかっこええキャッチコピーがお決まり。色合いもさることながらキャッチコピーは生命線。パッと思いついた…勝ってメシでも倉岡慎太郎。なんとかせいよ~岡田征陽。下ネタ系なら、そそり立つ伊藤成紀。男で生まれたのに川口満宏。おたまじゃくし先行松本聖志。えっ? 熱烈なファンがこんなん作りまっかいなって? ほんまやなぁ…。

 話変わるけど我が阪神タイガース負けてしもた。あんなゲームセットは見たことないで。でも、らしいといえばらしいやん。そやで、関西人のオチはやっぱお笑いっしょ!

 ◆齊藤 哲也(さいとう・てつや)1959年(昭34)4月生まれの55歳。元競輪選手(兵庫支部)。45期生の卒業チャンピオンとして80年にデビュー。S級で活躍も40歳で悪性リンパ腫により、03年7月やむなく引退(優勝25回)。本紙予想コラムでは高配的中数知れず。アナ車券の達人!! 兵庫・S阪神のアドバイザーとしても活躍。現在もガン闘病中のカリスマ的患者。

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