79歳完全燃唱 小椋佳「こみ上げるものある」 思い出の地NHKホールで最後のコンサート

[ 2023年1月19日 04:59 ]

ラストライブを行う小椋佳(撮影・塩澤 秀樹)
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 シンガー・ソングライターの小椋佳が79歳の誕生日を迎えた18日、東京・渋谷のNHKホールで最後のコンサートを行った。2021年に音楽活動から引退することを発表していた。銀行員との二刀流で始めた52年の音楽人生。「本当にこれで最後。ありがとうございます」とすがすがしくステージを去った。

 中盤のトークで「一生分、生きさせていただいた。レコードも何十枚も出させていただいた」と語り、引退に悔いはない様子。「小椋佳は恵まれてきたとつくづく思う。こみ上げるものがありますね。目のあたりがウルウルしちゃいます」。感傷的になる場面もあったが、トークではジョークを飛ばし、最後まできっちりと歌いきった。

 NHKホールは人生初のコンサートを行った場所。1971年のデビューから5年後の1976年10月7日だった。「思い出しますよね。言ってみればホームグラウンドです」と懐かしそうに語りながら、当時の1曲目に歌った「しおさいの詩(うた)」を歌唱した。

 引退の理由は体力の衰えだ。「いろいろおっくうになって、生きてることさえしんどい」と吐露。「この頃は、さあ風呂に入ろうと思ってから、湯船に漬かるまでに2時間かかる」と日常生活も面倒に感じることが多く、「今日も最後まで持つかどうか…。途中で倒れたら倒れたで、ご勘弁ください」と笑った。

 それでも「生きてるからには一生懸命生きよう」が信条。高音の声が出づらそうなシーンも見られたが、力強く優しく響く重低音のきれいな声は健在だった。美空ひばりさんに提供した「愛燦燦」、布施明(75)の「シクラメンのかほり」なども歌唱。楽曲を提供した梅沢富美男(72)、堀内孝雄(73)、中村雅俊(71)、林部智史(34)もゲストで駆けつけ、会場を盛り上げた。

 小椋が最後に選んだ曲は「山河」。♪顧みて 恥じることない 足跡を 山に 残したろうか――。歴史に残る曲を多数生み出した小椋の音楽人生。恥じるどころか、称えられる足跡に違いない。

 《不滅の232週オリコン100位入り》小椋は日本音楽史に輝く不滅の記録を持っている。72年3月に発売した自身3作目のアルバム「彷徨(さまよい)」は232週にわたってオリコンチャートでトップ100入り。これは日本音楽史上、最長記録となっている。75年12月に当時最新作のアルバム「夢追い人」(同9月発売)と「彷徨」がオリコンチャートで2、3位を記録したのを機に11週連続で2作がトップ3入り。この記録もいまだに破られていない。

 ◇小椋 佳(おぐら・けい)1944年(昭19)1月18日生まれ、東京都出身の79歳。67年に東大卒業後、日本勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。本店財務サービス部長などを歴任し音楽活動も並行。71年に歌手デビュー。「道草」「遠ざかる風景」などでオリコン1位を獲得。多数のアーティストに楽曲提供した。NHK紅白歌合戦に3回出場。00年には東大大学院で修士号取得。

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