【男優主演賞】沢田研二「もっとできたはず」も…完成品見て伸びしろあると 謙遜「功労賞的な意味合いも」

[ 2023年1月19日 05:00 ]

男優主演賞に輝いた沢田研二(カメラ・瀧川寛)

 2022年(第77回)毎日映画コンクールの各賞が18日、決定した。三宅唱監督(38)の「ケイコ 目を澄ませて」が日本映画大賞、監督賞はじめ5冠に輝いた。男優主演賞は「土を喰らう十二ヵ月」の沢田研二(74)、女優主演賞は「ケイコ 目を澄ませて」の岸井ゆきの(30)がともに初受賞。田中絹代賞には寺島しのぶ(50)が選ばれた。表彰式は2月14日、東京・めぐろパーシモンホールで開催される。

 戸惑いがちの表情で姿を見せた。東京・本郷の日活本社。撮影場所で受賞理由を説明すると、やっと沢田の顔から笑みが漏れた。

 「驚きました。こういう賞には縁がないと思っておりましたので」と控えめに語りながら「やっぱりうれしいものです」としみじみ続けた。

 作家・水上勉さんの料理エッセーをもとに中江裕司監督が腕を振るった作品に深い味わいを添えた。北アルプスを望む信州が舞台。13年前に亡くなった妻の遺骨の処理を決めかねながら、愛犬と山荘で暮らす作家の1年を、実際に1年半をかけ四季を織り込んで丁寧に描いた。

 1980年代、京都の梁山泊というカウンターだけの店で水上さんと席を1個隔てて座ったことが2度あったという。「その時の縁があったのかなあと、この仕事の依頼があった時に思いました」と秘話を口にする。

 土を耕し、自然が恵んでくれた食物をありがたくいただくことで豊かになる心。料理研究家・土井善晴さんの監修のもと包丁さばきも鮮やかだった。小芋、ワラビ、ホウレンソウ、そして羽釜で炊いた白米…。それらを食す恋人役の松たか子(45)も愛らしかったが、演じるのではなく、ただそこに存在し、溶け込んでみせた沢田の円熟味に舌を巻いた。

 それでも「出来上がったものを見ました時には、もっともっとちゃんとできている…はずだったんですが、自分ではそうでもなく、もっとできたはずだなあというような、まあ、そう思えるだけ、この年になっても伸びしろがあると解釈すべきなのかどうなのか、よう分かりませんが…。とにかく功労賞的な意味合いもあるのかなと思います」と謙遜。その上で「凄い俳優さんがいる中で、私を選んでいただいたのは、本当にとってもとってもうれしいし、せんえつだし、恐れ多いし、そして大変ありがたく思っております」と結んだ。

 「太陽を盗んだ男」(79年)「ときめきに死す」(84年)など、銀幕に美しさを焼き付けてきたジュリーも古希を過ぎた。コロナ感染で永眠した志村けんさんの代役で主演した「キネマの神様」(21年)でも存在感を示したように新境地を迎えている。「俳優・沢田研二」から目が離せない。 (佐藤 雅昭)

続きを表示

この記事のフォト

2023年1月19日のニュース