【スポニチグランプリ新人賞】番家一路、ひと夏の成長…わんぱくが流した涙 将来は俳優?先生?

[ 2023年1月19日 05:00 ]

番家一路(右)は「サバカン SABAKAN」でも共演した弟の天嵩と大喜び (撮影・西川 祐介)
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 2022年(第77回)毎日映画コンクールの各賞が18日、決定した。大器の片りんを見せた新星に贈られるスポニチグランプリ新人賞には金沢知樹監督の「サバカン SABAKAN」に出演した番家一路(ばんか・いちろ、12)と川和田恵真監督の「マイスモールランド」に主演した嵐莉菜(あらし・りな、18)が選ばれた。フレッシュな2人はそれぞれの言葉で飛躍を誓った。

 目の前の一路を見て、昨今あまり耳にしなくなった「わんぱく」「自然児」といった言葉を思い浮かべた。

 金沢監督が紡いだのは1986年の長崎を舞台に、「久田」と「竹本」の2人の少年の冒険と別れを、それぞれの家族の日々も織り交ぜて描いた、ひと夏の物語。オーディションで「久田」役に選ばれたが、「演技は一番下手だったと監督から言われた」と告白するから面白い。

 当初は、家が貧乏で周りから疎んじられている「竹本」役を受けたが落選。ところが「友達の役をやってみない?」と言われて、待っていたら何と「久田」役のご指名だ。「下手くそと言われたのに“何で合格?”と聞いてみたら“一路そのままが良かった”って」

 監督も天然素材にほれ込んだに違いない。大人になった「久田」を演じた草なぎ剛(48)からは「凄く良かったよ」と褒められ、誕生日にTシャツをプレゼントされたという。

 夏休みを利用しての約1カ月の撮影。「竹本」役の原田琥之助(はらだ・こうのすけ)とイルカを見にブーメラン島まで泳いで渡るシーンは決死の覚悟。「実は泳げなくてみんなに助けてもらったんです」と裏話も披露した。「竹本」が作ってくれたサバ缶のにぎり寿司を食べる場面は感動的。タイトルにもつながるモチーフだが「サバ缶大好き!自分も作ってみたかった」と声を弾ませた。

 「久田」を囲む家族もあったかい。口は悪いし手も出るが、竹原ピストル(46)と尾野真千子(41)が演じた両親から注がれたたっぷりの愛情。「夫婦げんかのシーンは口からツバが飛んで大怪獣バトルみたいでしたけど、竹原さんも真千子さんも優しく接してくれて本当の家族みたいでした」

 クライマックスはこちらの涙腺を緩ませた。思わぬ不幸から訪れる「竹本」との別れ。餞別(せんべつ)にサバ缶を渡して父の胸で号泣。「これで終わりかと思うと自然に涙が出て…」と振り返った。

 劇中で弟を演じたのは実弟の天嵩(てんた、10)だ。NHK朝のテレビ小説「ちむどんどん」で先に注目を集め、兄を刺激した。4月から中学生。「将来は小学校の先生にもなりたいし俳優もやりたい。この2択で迷ってます。お金持ちにもなりたい」と加えて笑わせた。「一路まい進」は先でいい。 (佐藤 雅昭)

 ◇番家 一路(ばんか・いちろ)2010年(平22)6月15日生まれ、神奈川県出身の12歳。番家姓は熊本に多く、父も熊本出身。5人きょうだいで、長姉以外は子役。23年前期のNHK連続テレビ小説「らんまん」、5月公開の映画「銀河鉄道の父」に出演。体育と算数が得意。 

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