阿部菜々実 ソロライブで力強い一歩 「ちょっと大人になった感覚」

[ 2022年9月27日 07:40 ]

24日に行われたライブで歌う阿部菜々実
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 【牧 元一の孤人焦点】アイドルなのか、アーティストなのか。阿部菜々実(20)は興味深い存在だ。かつてアイドルグループ「ラストアイドル」の中心メンバーとして活動したが、今は自ら作詞、作曲を手掛けて1人で歌っている。24日に都内で行ったソロライブは、アイドルの良い香りを残しつつ、力強くアーティストへの一歩を踏み出したように見えた。

 2曲目に披露した「フロート」。オリジナル曲の一つで、激しい動きの振りがついている。常識としてステージの上で1人で踊りながら歌うのは難しいことだが、阿部は果敢に挑み、踊って歌いきった。その躍動感がマイクを通して伝わって来た。

 披露した計15曲のうち12曲がオリジナル。子供の頃からアイドルとして活動して来た阿部とは距離があるような恋心の歌や、逆に、アイドルグループでの活動を終えた時の心境やその後の思いを率直に明かしたようなリアルな歌が印象に残った。

 11月9日に初のソロアルバム「ユメノカケラ」を発売することも発表。「カケラ」「あの夏の君を思い出して、僕は走りたくなった。」「まだ忘れられない、あの夏の君へ。」「ほんとはさ、」「ラブソング」など計14曲は、全て阿部が作詞、作曲したものだ。今年3月のラストアイドル活動終了発表からおよそ半年という短い期間でアルバムに結実させたことに驚きさえ覚える。

 ライブ翌日の25日。都内で本人にライブやアルバムについて聞いた。

 「ライブを重ねて余裕ができました。7月のファーストライブの時は、ただただ一生懸命にやるだけで、お客さんの顔を見ることもできなかったんです。今回はお客さんの顔を見ることができましたし、ちゃんと歌詞に向き合ってみなさんに届ける気持ちで歌うこともできました。この2、3カ月で成長した部分だと思います」

 踊りながら歌うこと。それも成長した部分だ。

 「最初の頃はダンスを激しくすると歌がだめになってました。グループの時は自分のパートだけでいいからできたんですけど、1人だと息が切れて歌えなくなってしまう。でも、お客さんに見ていただくという部分では、やはり踊らないと物足りないと思うんです。ダンススタジオに行って練習したり、カラオケでも狭いですけど練習したりしました。今はバランスを調整して踊りながらでも歌に集中できるようになりました」

 ファーストアルバムはこれまでの努力の結晶と言える。

 「レコーディングで14曲を自分で歌うのは予想以上に大変でした。1日に2、3曲ずつ録ったんですけど、体力と集中力を保つのに苦労しました。でも、私はコーラスが好きなので、コーラスの部分を録るのが楽しみだったんです。グループの時は自分でコーラスができなかったけれど、1人だと全部自分でできるので楽しいす。すてきな編曲をしてもらって、いろんな人のおかげで、とてもいいアルバムができました」

 10月30日にはツアーがスタートする。回るのは大阪、新潟、山形、愛知、東京、宮城の6カ所だ。

 「ワクワクします。ファン一人一人の目を見て、一人一人に感謝の気持ちを伝えられるツアーにしたいです」

 そんな彼女は、アイドルなのか、アーティストなのか…。

 「自分としては、アイドルでも、アーティストでもないです。肩書は決まってない。ただ、ちょっと大人になった感覚、一つステップアップした感覚はあります」

 確かに、大切なのは、肩書ではなく、聴く人、見る人を魅了できるかどうかだ。まだ20歳。これから、さまざまな面で成長していくだろう。1年後、3年後、5年後…と未来が楽しみな存在であることは間違いない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年9月27日のニュース