「鎌倉殿の13人」山本千尋 トウ役と日々格闘 せつ瞬殺「まるでスローモーション」初登場に感慨&決意

[ 2022年8月28日 08:02 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第31話。せつ(山谷花純)を一撃で仕留めるトウ(山本千尋・右)(C)NHK
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 後半に入り、さらに衝撃の展開が続くNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)。“2代目善児”トウ役に抜擢された女優の山本千尋(25)が持ち前の身体能力を生かし、鮮烈なインパクトを残している。山本に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に、御家人たちが激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 山本は大河初出演。仕事人・善児(梶原善)に育てられた孤児(みなしご)・トウ役を演じる。3歳から中国武術を習い、武術太極拳の「世界ジュニア武術選手権大会」で2度の金メダルを獲得した元世界女王。“新世代アクション女優”の呼び声も高い。

 初登場は第29回「ままならぬ玉」(7月31日)。北条義時(小栗)たちの度肝を抜く俊敏な動き、剣さばきを次々に披露した。「比企能員の変」を描いた第31回「諦めの悪い男」(8月14日)は、能員(佐藤二朗)の娘で2代鎌倉殿・源頼家(金子大地)の側室・せつ(山谷花純)を瞬殺し、事もなげに初任務を完了。北条による比企滅亡に一役買った。

 ――第29回、目標の1つだった大河ドラマに待望の初登場。「クレジットに自分の名前が出ると思うだけで涙が出そう」とオンエアを心待ちにされていました。当日はリアルタイムでご覧になりましたか?

 「もちろんリアルタイムでソワソワ、ドキドキしながら、その時を迎えました。完パケで一足先にチェックさせていただいてはいたのですが、やはり地上波で皆さまに見ていただける瞬間というものは特別です。去年の年末、帰省する新幹線の中で三谷さんの対談集『ボクもたまにはがんになる』を読んでいました。その本の中も、『真田丸』の放送初日を心待ちにしている方がこんなにもたくさんいるんだと、三谷さんご自身が感動されたという内容が書かれていて、私も『大河ドラマという大きな作品の中で、三谷さんが描く物語に生きる1人として、このオープニングに自分の名前が載るんだ…』と、ちょうどオファーを頂いて間もない時でしたので、胸がいっぱいになりながら年末を過ごしました。三谷さんが何年もかけて作り上げていらっしゃる『鎌倉殿の13人』。そして小栗さんをはじめとした俳優陣の皆さまと各プロフェッショナルなスタッフの皆さまの想いが詰まったこの作品に対して、途中参加の私が言葉にするのは大それたことかもしれませんが、厚かましいことを言わせていただけるのなら『この素晴らしい作品の一部として、とにかく一緒に駆け抜けさせてください』という気持ちを強く持ちました」

 ――初登場からSNS上は大反響。周囲の反響も含め、どのように感じられましたか?

 「三谷さんの対談集に書かれていた思いと同様、私にも家族や友人、応援してくださる方々がいて、届けてくださる言葉をひとつひとつ純粋にありがたく頂きました。ありがたいことに本当にたくさんの記事も出していただき、またたくさん感想も頂いたので、あらためて大河ドラマの凄さを感じましたし、これから撮影していく中で良い意味で裏切りたいと心の底から想いがあふれました」

 ――第31回、せつを一撃で仕留めました。どのようなことを心掛けて演じられましたか?

 「せつ役の山谷さんとは作品でご一緒するのは3度目だったのですが、今まで同じシーンがなく、なかなかお芝居で対面する機会がありませんでした。ですが、10代の頃から顔見知りで、歳も同じで、リハーサルで久しぶりに花純ちゃんにお会いした時、凄くホッとしたんです。このシーンは、せつという1人の女性の生涯が終わる瞬間であり、善児の後継者となるトウが初仕事をする世代交代の始まりでもありました。そして、今後スナイパーとして生きていくであろうトウも、せつの涙は心の片隅に残るんじゃないかと感じたシーンでもあります。出番としては一瞬で、瞬殺とも言えるシーンですが、私にはまるでスローモーションのように感じられました。善児とはまた違う怖さを見せたいという課題もある一方で、女性ですから、どうしても力の面では差が出てしまいます。スマートで俊敏で、汚れ仕事をする姿がどこか格好良く見えてしまう“不気味な生き物”善児とは違い、トウのことは“スイッチを入れたマシーン”と思っていただけたら大成功だな、なんていう欲もありました。善児同様、明かされない部分が多いので、あの一瞬で『この子はどれだけの修行を積んできたのか。人を殺めることに躊躇がない心になってしまったのか』と感じていただけたら。視聴者の皆さまと同じく、私も描かれていないストーリーを想像しながら『果たして、これで合っているのだろうか…』と日々闘っています」

 ――トウが画面の右から突然現れ、驚いた視聴者も多かったと思います。

 「私が大河という現場に緊張して悩んでいるのをスタッフチームの皆さまが感じ取っていただいて、あの一瞬の出番でも『この角度が格好いいんじゃないか、他も色々試してみよう』と(第31回)演出の保坂(慶太)監督や、カメラマンさん、アクション部さんが声を上げて、そっと手を差し伸べてくださいました。そんな皆さまの想いがこの上なくうれしく『何が一番良いか』と常に最善を尽くし、高みを目指して、どの登場人物に対しても試行錯誤して平等に寄り添ってくださるので、帰り道に胸がいっぱいになって泣きそうになるくらいありがたかったです」

 予測不能なトウ・山本の動き。今後も、一瞬たりとも気が抜けない。

 ◇山本 千尋(やまもと・ちひろ)1996年(平8)8月29日生まれ、兵庫県出身。2008、12年に世界ジュニア武術選手権大会の槍術(そうじゅつ)で金メダル。10~12年にはJOCジュニアオリンピックカップの長拳、剣術、槍術の3種目で3連覇を果たした。15年、「ジャパンアクションアワード」のベストアクション女優優秀賞に輝いた。公開中の映画「キングダム2 遥かなる大地へ」(監督佐藤信介)に羌象(キョウショウ) 役で出演。

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