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投手・大谷が加えた3つの変化 ぶっつけ本番から見えた進化とは

[ 2022年5月21日 08:30 ]

エンゼルス・大谷翔平
Photo By スポニチ

 驚いた。いとも簡単にやってのけたように見えた。エンゼルス・大谷は、今季3度目の登板となった4月20日のアストロズ戦から突如、投球に3つの変化を加えた。

 (1)始動時に胸の位置だったグラブを下げ、腹の前に置く。
 (2)スライダーを投げる時に、右肘をやや下げる。
 (3)走者がいない場面でもクイックモーションで投げる。

 (1)については「一番は癖」と語り、球種が打者にバレないようにすることが狙いだとした。(2)については多くは語らなかったが「わざとです」と言及。現地や映像で見る限り“横振り”になったことで、横の変化量が高まった。(3)は「相手の打者のタイミング的なもの」、「ある程度、クイックで投げることによって、走者が出た時にしっかり同じテンポで投げられるのも大事」と2つの理由を挙げていた。

 20日の登板以降は5試合中、4試合がクオリティー・スタート(6回以上、自責点3以下)と効果は着実に出ている。特筆すべきは、この3つの変化は登板前にブルペンで練習したとはいえ、実戦では“ぶっつけ本番”だったことだろう。そんな状況下で球種割合もマネジメントしたことにさらに驚いた。4月20日のアストロズ戦はスライダー、5月11日のレイズ戦は通常より速いパワーカーブ、18日のレンジャーズ戦は100マイル(約161キロ)超えの直球を多投するなど、試合ごとに勝負球を変える器用さを見せている。

 日本ハム在籍時に当時の栗山監督は事あるごとに「翔平(大谷)は投げることに関しては不器用」と語っていた。実際に立ち上がりは不安定で、渡米直後の18年も課題として残っていた。1メートル90台の長身としなやかな投球フォームから球団OBのダルビッシュ(現パドレス)とよく比較されたが、日本ハムのトレーナーや投手コーチは口をそろえて「ダルビッシュは動きの再現性の高さが断トツ。翔平とは違う」と話していたことを思い出す。

 何が大谷を変えたのか。その要因の一つとして考えられるのは、昨季から本格的にルーティンに導入した、プライオボール(重さの違う6種類のボール)での「壁当て」だろう。大谷はその効果を「重さの違うボール、大きさの違うボール、投げることによって動きのセンスというか、上手さみたいなものがやぱり出てくると思う」と語っている。肩肘の強化はもちろん、投球フォームの再現性の向上などにつながった可能性がある。

 メンタル的な要因も忘れてはならない。今季2度目の登板だった4月14日のレンジャーズ戦で、4回途中6失点で降板。大谷はその反省を踏まえた20日のアストロズ戦の投球の変化について「修正は毎週しますね。それは良くても悪くても。特に負けた試合なんかは随所に何が悪かったのかは出ると思う」と語っていた。変化を恐れなかったのだ。9勝を挙げた昨季は、1回をもたず7失点KOされた6月30日のヤンキース戦以降、カットボールを主体に打たせて取る投球スタイルに変えて躍進した。当時の状況によく似ている。

 大谷も自身の伸びしろを分かっている。昨秋の日本記者クラブでの会見で、メジャー5年目の今季に向けて次のように語っている。「バッティングもそうですけど、特にピッチングなんかは、まだイニング数はそこまで多くないので。数を増やしていけたらもっともっと高いレベルで数字も残るんじゃないかなと思っています」。「投手・大谷」は今、進化の真っただ中にいるのかもしれない。(記者コラム・柳原 直之)

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