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「怪物」だが「エリート」ではない―デビュー戦で感じた朗希の雑草魂

[ 2021年5月22日 09:30 ]

16日の西武戦でプロ初登板初先発したロッテ・佐々木朗(撮影・長久保 豊)
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 コントロールがいいのは分かっていた。それでも、緊張すれば、自然と力むし、力めば、投げたボールも多少散らばると思っていた。ところが、ロッテ・佐々木朗希から、そんな姿は見られなかった。

 5月16日に1軍デビューした投球を見て、個人的に「一番凄い」と感じたのは、自分自身をきっちりとコントロールできていたところだった。

 それまでのイースタン・リーグの成績を見ても、20イニングでわずか5四死球。2軍での投球映像も見ていたので、デビュー戦で5回6安打4失点(自責点2)にまとめたことに驚きはないし、もっといい投球をしても不思議ないと思っていた。

 実際に、吉井投手コーチは朗希の投球については一年前から球威以上に、制球のよさを称えていた。そんな経緯から、試合前から「2軍と同じような球を投げられたら、そんなに打たれないだろう」と予想した。

 ただ、それも普段の力を発揮できればの話であって、普通に力を発揮させてくれないのが、プロ野球の1軍である。しかも初登板なのだ。

 ルーキーイヤーのシート打撃で本塁打を打たれた直後に、簡単に160キロを投げてしまった右腕。出力を上げると、これまで体に反動が出た経緯もあり、ここまでは力んで投げることをせず、2軍ではどんなシチュエーションでもボールに力を効率よく伝えることを意識していた。

 それでも、投手としての本能がある。立ち上がりに「パチン!」と打たれたら、無意識に力んでしまうのはないか。「1軍を抑えるには、もっと速い球を投げないといけない。やっぱり、抑えたい」。そんな本能が顔を出したら、2軍で156キロだった球速が、160キロまで出てしまうのではないか。そうなると、制球がバラつく可能性はあるとも思っていた。

 ところが、そんな心配も関係なかった。初回の先頭・若林に初球を打たれても、二盗を決められても、急にギアを変えたりすることなく、目指すべき投球スタイルを変えなかった。

 107球を投げて、最速は154キロ。平均球速151キロという安定感はさすがの一言だ。これまで「怪物」と呼ばれてきた野球選手たちは、野球エリートだったが、朗希は違う。地元の仲間たちと挫折を繰り返してきた「雑草」ともいえる。

 プロ1年目の挫折もあった。踏まれても踏まれても、へこたれない「強さ」、メンタルの「強さ」を感じたデビュー戦だった。(記者コラム・横市 勇)

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