×

【内田雅也の追球】手指の保護に「鍋つかみ」も 首位快走の阪神が怖いコロナとケガ

[ 2021年5月22日 08:00 ]

セ・リーグ   広島ー阪神(試合前中止) ( 2021年5月21日    マツダ )

二塁打を放ち、二塁へヘッドスライディングする阪神・佐藤輝明。右は中日・京田陽太(5月11日、甲子園)
Photo By スポニチ

 阪神は予定の広島との3連戦が延期となった。広島チーム内で新型コロナウイルス感染者が多数出たためで、鈴木誠也ら主力選手も含まれている。17日の菊池涼介陽性判定から広がりを見せている。あらためてコロナの怖さを思う。

 今季は開幕直後からヤクルト、巨人、日本ハムらに感染者が出て、濃厚接触者も含めて試合出場が止められ、チーム活動も制限された。主力選手の離脱はペナントレースの行方も左右する。

 阪神が優勝した1985(昭和60)年、首脳陣は主力の故障離脱に注意を払った。参謀格の守備コーチだった一枝修平は真弓明信に「無理なプレーはするな」と言い聞かせたそうだ。フェンス際や飛び込む必要のある打球にブレーキをかけていた。「一つのアウト・セーフはその試合では大切だろうが、ケガしておまえに何試合も抜けられる方がチームとしては痛手なんだ」。掛布雅之や岡田彰布らにも同様の話をしていたのではないか。

 だが、いくら注意しても故障はついて回る。特に今季はヘッドスライディングによる負傷が目立つ気がする。巨人・坂本勇人、DeNA・倉本寿彦はともに今月9日、一塁へのヘッドスライディングで指を骨折した。ソフトバンクのジュリスベル・グラシアルも7日に指を骨折した。

 倉本は内野ゴロでの走塁だったが、坂本とグラシアルは帰塁だった。憤死を逃れるためとっさに頭から帰ったのだ。

 「けがをする」と現役時代、決してヘッドスライディングをしなかった「世界の盗塁王」福本豊の嘆きが聞こえてくる。

 著書『走らんかい!』(ベースボールマガジン社新書)には、一塁走者として、けん制球の帰塁について<必ず足から帰った>とある。<昔の一塁手はタッチがえげつのうてねえ。ガツンと、そりゃあ痛かった><今は平気で頭からベースに帰る。(中略)昔やったら、一発でケガさせられていますよ>。

 少年野球の一部団体はヘッドスライディングを禁止にしている。桑田真澄(現巨人投手コーチ)が少年野球の父子向けに著した『常識を疑え!』(主婦の友社)には<ヘッドは危険。足から滑ろう!>とある。

 一方で、けん制球の帰塁はヘッドの方が速く、長いリードが取れる、という論がある。アメリカでも古くから広まっていた。

 1983(昭和58)年、慶大野球部が米国遠征した際、南カリフォルニア大(USC)監督のゲーリー・アダムスから走塁指導を受けた。当時の慶大監督・前田祐吉が著書『野球と私』(青蛙房)に記している。一塁走者でけん制を受けた際、<頭から飛び込め>という。<前日の雨で水を含んだグラウンドに、つい尻込み気味だった選手たちも、中年のアダムス監督が自らユニフォームを泥だらけにして飛び込む身体を張った指導に、全員の態度が一変した>。

 このヘッドでの帰塁でリードの幅が広がり、次塁を目指す積極的な走塁が広まったそうだ。

 このヘッドスライディング論議はさておきたい。

 巨人は坂本負傷から3日後の12日から走者に「走塁ガード手袋」を着用させるようにした。米国製で、正式には「スライディング・ミット」という。大谷翔平ら大リーグでみられる「鍋つかみ」のように分厚く、手指を保護できる。

 プロ野球では2018年開幕後の5月8日から左右いずれかの手に限り使用許可となった。長さ30センチ以下、幅13センチ以下などの規定がある。

 阪神では新外国人のメル・ロハス・ジュニアが使っている。球団副社長・谷本修によると「全員が着用する方がベターとなれば、取り寄せることになる」と、今後の検討課題にしてある。

 今季、梅野隆太郎が一塁へ、佐藤輝明は二塁へ頭から突っ込んだ。危ないのは確かだが、止めるわけにもいかない。
 手指の消毒に手指保護の「鍋つかみ」か。首位を走る阪神がいま最も怖いのはコロナとけがだろう。 =敬称略= (編集委員)

続きを表示

この記事のフォト

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2021年5月22日のニュース