阪神・藤浪が「個性」全開でつかんだ1450日ぶりの聖地星 5四死球も“らしさ”「甲子園大好きなので」

[ 2021年4月17日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神2ー0ヤクルト ( 2021年4月16日    甲子園 )

<神・ヤ>6回途中まで無失点に抑え、甲子園で久々の勝利を挙げた阪神・藤浪(撮影・奥 調)
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 やはり、甲子園の申し子だ。阪神・藤浪晋太郎投手(27)が甲子園球場では1450日ぶりの白星をつかんだ。16日のヤクルト戦で5回に3年ぶり3本目、本拠地では9年目で初めて放った本塁打が先制&決勝弾になった。マウンドでも94球の粘投で5回2/3無失点に抑え、6連勝&貯金10に貢献。阪神の日本人投手で甲子園での決勝弾&勝利は73年江夏豊以来だった。

 この場所でやっと笑えた。藤浪が甲子園、そして、ファンに恩返しの力投を届けた。

 「先発のみんながすごく抑えてますし、プレッシャーではあったんですけど…」

 左足の上げ方を変えたフォームで臨み、3回まで無安打の一方、今季初死球を含む5四死球を与えた。5回からは無走者でもセットポジション。6回2死で降りる不完全燃焼でも「ゲームは崩してないのかな」と先発の役割を果たした。

 数年前、知人の何げない言葉が胸に刺さった。「俺は鳥谷を見に行きたいのに。今は阪神の選手の名前もほとんど知らないよ。球場に見に行こうとあんまり思わないもんな」。忘れていたものに気づいた。

 「その時まで自分は正直、勝つことしか考えてなかったので。その言葉は自分にとってすごく大きかった。プレーヤーおのおのの個性があって、それを見たいファンがいる。もちろん成績、数字は大前提ですけど、そういう個性もプロとして大事なんだと」

 近年、「藤浪のピッチングを球場に見に行きたいと思ってもらえるように」と口にするようになった確たる理由だ。

 昨秋初体験の中継ぎで160キロを投げ込むと、スタンドが想像以上に沸いた。

 「自分はまだこんなに球速、出るんだと。あれだけ盛り上がってもらえると、それを見たいと思ってもらえるお客さんも出てきてくれるのかなと。魅せる方に走ってプレーが崩れるのは違うんですけど、プレーする中でより魅せられるか。例えば子供たちに純粋に格好いいと思ってもらえるような。そういうことを、この1、2年で意識し始めました」

 もちろん「勝利」があってこそ、より輝く。19年には唯一の1軍登板だった8月1日に甲子園の大歓声に迎えられた。「1登板しかできなかったのに、すごい歓声をもらって。あそこから、見られる自分を意識し始めた。この歓声に応えるために成績を出さないといけない」。「勝利」と「魅了」が12日に27歳になった藤浪の合言葉だ。

 ファンを驚かせた先制131メートル弾、ハラハラさせた94球の粘投。背番号19のワンマンショーと化した。「すごく応援してもらってる感じがします。ヤジも多くて甲子園で投げるの嫌だなって思った日もあったんですけど。甲子園大好きなので、これからも頑張ります」。体現したかったプロとしてのあるべき姿。甲子園に藤浪を見に行きたい――。そんな人が増えた夜になった。(遠藤 礼)

 《決勝打はすべてヤクルト戦》藤浪(神)の甲子園勝利は17年4月27日のDeNA戦以来1450日ぶり。この間、同球場23度の登板(先発15、救援8)で6敗6ホールドだった。5回には決勝打となる2ラン。藤浪の決勝打は3度目で15年8月14日(神宮)、20年8月21日(神宮)とすべてヤクルト戦。前回は692日ぶりの復活勝利で決めている。

 《満塁に強い》藤浪は今季4試合目の登板で初の無失点。過去3試合5失点の内訳は3月26日ヤクルト戦2回二ゴロ(1)、5回暴投(1)。4月2日中日戦2回ボーク(1)。同9日DeNA戦7回2ラン(2)。唯一安打で失った9日の2ランも走者一塁からで、得点圏からの適時打は許していない。特に走者満塁では二ゴロの間の1失点のみ、9打数無安打に抑えている。

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