「智弁和歌山あるある」高嶋監督ノックはスナイパーばりの命中率

[ 2015年8月9日 08:10 ]

【智弁和歌山あるある】スナイパーばりの命中率を誇る高嶋監督のノック(C)クロマツテツロウ

 和歌山代表として毎年のように甲子園にやってくる智弁和歌山。歴代トップの甲子園通算63勝(8月8日現在)を誇る高嶋仁監督に率いられ、1学年わずか部員10名という少数精鋭。そんな智弁和歌山野球部の日常を「あるある」形式で紹介する(以下の「あるある」は2000年台前半の内容です)。

 【智弁和歌山野球部あるある1】高校野球で「アフリカン・シンフォニー」を聴くたびに「本家はウチだ」と思う。

 今や高校野球応援の定番曲になっている「アフリカン・シンフォニー」は、もともと智弁和歌山の吹奏楽部が甲子園で最初に演奏した。それを他校が続々と模倣して現在に至る。また、同様に「魔曲」として知られる「ジョックロック」も智弁和歌山が導入し、アルプスに浸透しつつある。多くの高校野球ファンが智弁和歌山の応援を楽しみにしているように、プレーしている選手たちだって心待ちにしているのだ。

 【智弁和歌山野球部あるある2】うんざりするほど聞いた陰口「智弁和歌山のOBはプロで大成しない」。

 近年は西川遥輝(日本ハム)や岡田俊哉(中日)の活躍で言われるケースはほとんどなくなったが、かつては「智弁和歌山」の連想ゲームをやったとしたら、「OBがプロで大成しない」は5番以内に入ってきただろう。そもそもプロに選手を輩出すること自体が快挙なのだが、甲子園での活躍ぶりからすると物足りなく感じられてしまう。それもまた、全国屈指の強豪校の宿命なのだ。

 【智弁和歌山野球部あるある3】スナイパーばりの命中率を誇る高嶋監督のノック。

 守備練習中の内野手に「グラブをそこに置いとけ(動かすな)」と指示して、そのグラブのポケットに寸分の狂いなくノックの打球を打ち込んでみせた……。そんな「高嶋伝説」が智弁和歌山で語り継がれている。現在は69歳の高齢ということもあり、今夏の和歌山大会では残念ながらノックを打たなかったという。それにしても、高嶋監督、前田三夫監督(帝京)、そして惜しまれつつ監督を勇退した渡辺元智監督(横浜)と、名将にはノックの達人が多い。

 【智弁和歌山野球部あるある4】甲子園で活躍しても、同級生の女子は受験で忙しいので相手にされない。

 意外と知られていないのだが、智弁和歌山という学校には運動部は野球部しか存在しない。サッカー部もバスケ部もなく、少林寺拳法部はなぜか文化部扱い。学校の「スポーツコース」は野球部のために存在している。そして、野球部以外の生徒たちは東大・京大などの難関大学を目指すような秀才だらけ。県下ナンバーワンの進学校という側面もあり、たとえ甲子園でチヤホヤされた部員でも、受験勉強で忙しい才媛たちに構ってもらえない。

 【智弁和歌山野球部あるある5】部員不足に陥る新チームの練習が辛(つら)い。

 1学年あたり部員が10人しかいないということは、3年生が引退した夏以降は部員が20人になってしまう。野球部員は本来、練習中の「待ち時間」を利用して体力回復や温存を図るものだが、智弁和歌山の部員たちはそれができない。打撃練習をしても守備練習をしても、すぐに自分の番が回ってきてしまうからだ。平日14時半から21過ぎまでみっちり練習するので、1日の総スイング量は1000回ほどになるという。

 【智弁和歌山野球部あるある6】「辯」という字の覚え方は「辛い辛いと言う」。

 ユニホームのロゴを見ればわかるように、智弁和歌山の「弁」の字は正式には「辯」と書く(こちらをしっかりと書かないと怒り狂うファンもいるので注意が必要だ)。一見複雑に見えるこの漢字だが、選手たちの間では決まった覚え方がある。それは「『辛い辛いと言う』で『辯』」という、弁才天もビックリの内容だった。智弁和歌山野球部の日常を象徴したようなこの書き方を、部員たちは日々の練習のなかで体に染み込ませていく。「辛い辛いと言い」ながら、ようやくやって来た甲子園。あとは思う存分、暴れてほしいものだ。

 ◆文=菊地選手(きくちせんしゅ)1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある3』が8月26日に発売されることになった。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。

 ◆漫画=クロマツテツロウ1979年生まれ、奈良県出身。高校時代は野球部に所属した漫画家。現在は月刊少年チャンピオン(秋田書店)にて異色の“野球部漫画”『野球部に花束を』を連載中。単行本(既刊6巻)、LINEスタンプも好評を得ている。

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