聖光・歳内「勇気」の16K&「絆」のサヨナラ打

[ 2011年8月7日 06:00 ]

<聖光学院・日南学園>2回、渡辺を空振り三振に取り、雄叫びをあげる歳内

第93回全国高校選手権大会1回戦 聖光学院5―4日南学園

(8月6日 甲子園)
 球児たちの特別な夏が幕を開けた。1回戦3試合が行われ、東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の代表、聖光学院が延長10回の末、5―4で日南学園(宮崎)にサヨナラ勝ちを収めた。今秋ドラフト候補のエース歳内(さいうち)宏明投手(3年)は4失点しながら16三振を奪う力投に加えて、自らサヨナラ打。苦しみながらもチーム一丸となった初戦突破で、いまだ復興途中の被災地に絆と勇気を届けた。

 2時間27分の死闘にけりをつけた歳内は、激しく吠えながらガッツポーズを繰り返した。延長10回1死二塁から一、二塁間を破るサヨナラ打だ。

 「9回に追いつかれて、これは何かの試練だと思った。助けてくれた野手に借りを返すつもりだった。ホッとしている」

 いつもはクールな歳内の顔が紅潮していた。宝刀の鋭く落ちるスプリットを武器に、序盤から三振の山を築きながら3回2死から連打を浴びて2点を失った。5回は暴投で失点。大会屈指の好投手にとってよもやの展開を救ったのは頼れる仲間だった。7回に芳賀の二塁内野安打で同点に追いつき、さらに福田の右犠飛で逆転した。9回に自身の暴投で追いつかれたが、最後は自らのバットでサヨナラを決め、マウンドでは149球を投げきって16三振を奪った。

 3月11日の東日本大震災。福島第1原発事故の影響で練習は約2週間中止となり、歳内らナインは支援物資の運搬などのボランティア活動に励んだ。その一方で、斎藤智也監督は「震災があったから勝てるというのは違う。地震からたった数カ月の歩みをことさらに取り上げて、何かをやってきましたなどと言ってはいけない」と同情心に甘えるようなナインの気持ちは戒め、ミーティングで説いてきた。厳しい環境を乗り越えてつかんだ白星だけに、指揮官は「こんな気持ちで甲子園に来たのは初めて。今まで味わったことのない試練で、選手たちを誇らしく思う」と胸を張った。

 開会式を終えたばかりの歳内は「大きな拍手をいただいて、日本中の人が特別な目で見てくれていると感じた。負けて帰る時にも拍手をもらえるだろうけど、それだけは絶対に嫌だ」と話して試合に臨んだ。そのエースをバックがもり立て、チーム一丸での初戦突破。ナインは被災地に諦めないことの大切さを伝えた。津波の被害が大きかったいわき市出身の芳賀も「粘り強く戦えたことで小さいかもしれないけど、何かは伝わったはず」と言葉に力を込めた。

 兵庫出身の歳内は1歳半で阪神大震災を経験している。今回の震災後、心配する両親の元に帰省したが、約1週間でまだ余震が続く福島に戻ってチームをまとめた。12日の2回戦は最速152キロの釜田擁する金沢が相手だが、歳内は「ウチの打線も力があるので」と話した。強い絆で結ばれた仲間との最後の夏。みちのくの怪腕は、東北勢初の優勝旗を手にすることだけを信じて戦い続ける。

 ◆歳内 宏明(さいうち・ひろあき)1993年(平5)7月19日、兵庫県尼崎市生まれの18歳。楽天・田中、巨人・坂本らを輩出した宝塚ボーイズに中1から所属。聖光学院では昨夏の甲子園からエース。球種はスプリット、カーブ、スライダー、シンカー、チェンジアップ。憧れの投手は西武・涌井。家族は両親、妹、弟。1メートル82、82キロ。右投げ右打ち。

 ▼日本ハム・大渕隆スカウトディレクター スプリットは凄い落差。プロでもなかなかあの縦の変化はない。直球の制球を磨けば面白い。

 ▼ロッテ・永野吉成チーフスカウト 3ボールからでもスプリットを放れる。自由自在に操ってる感じだね。

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