石橋静河 時代劇主演で殺陣を習得 「自分の中に背骨ができた」

[ 2022年12月26日 08:30 ]

時代劇「まんぞく まんぞく」で主人公の堀真琴を演じる石橋静河(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】俳優の石橋静河(28)がNHK・BSプレミアムの時代劇「まんぞく まんぞく」(30日後8・00)に主演し、殺陣に初挑戦した。

 生誕100年を迎える作家・池波正太郎さんの小説が原作で、女性剣士・堀真琴を主人公とする物語。真琴は幼い頃に自分を守って殺された人の敵討ちをするため、剣の修業に励み、今や道場随一の腕前だ。

 石橋は「最初は不安しかなかったです。殺陣は初めの一歩から学ばなければいけなかったので、どうしたらいいのだろう…と途方に暮れました」と振り返る。

 撮影開始は10月だったが、6月から殺陣の訓練を開始。月に3回ほどの頻度から始め、9月からは京都の松竹撮影所に入って練習量を増やしていった。

 「まずは木刀の素振りから始めました。普段、そんな重いものを振り回さないので、素振りも大変でした。筋力はないんですけど、練習を続ける中で対応できる体になっていきました。袴をつけると重心が下がり、木刀の重さで体を動かすということを少しずつ体に染みこませました。殺陣に必要なのは力じゃない。刀の重さ、自分の体の重さ、相手の力を利用する。武道のようなことが基本にあるのだと少し分かりました」

 殺陣の場面は1人で演じるわけではない。相手役との息が合った動きが求められる。

 「呼吸の合わせ方が独特です。『いっせいのせ』で始めてしまうと、本当に人を斬るようには見えなくなってしまう。でも、2人の息は合っていないといけない。考えると、0コンマ1秒遅くなってしまう。遅れると、危ないことになってしまう。頭で考えずに体が自然に動くようになるまで反復練習しました。かなりハードルが高かったです。役者は自分が初めてやることを、あたかも人生をかけてやってきたことのように見せなくてはいけない仕事なのだと思います」

 最初の殺陣の撮影は真琴が悪党に襲われる場面。4カ月以上にわたる練習の成果を発揮する時が訪れた。

 「カメラがあった方が、動きが具体的になるので、練習の時よりやりやすかったです。そのシーンの撮影が終わった後、スタッフの方に『格好良かったですよ』とほめてもらってうれしかったです。現場のモニターで見たら、斬られる方々がプロなので、本当に凄く斬れているように見えました。続けて来た練習に間違いはなかったと思って安心しました。それがひとつ自信になって視野が広がりました」

 この時代劇の見どころは殺陣だけではない。「私を剣で打ち負かすような男が現れない限り結婚しない」と公言していた真琴が家族愛に包まれながら、旗本の三男・平太郎(永山絢斗)と出会って結婚を決意するまでが描かれる。

 「真琴は強いだけじゃなく、甘い物が好きだったり、女性らしい面があります。敵討ちのために自分で張ったガードが次第にほぐれていくイメージで演じました。いろんな顔を見せられる役なので、演じていて楽しかったです。平太郎との場面は現代の恋愛とは距離感が違って、ぎこちなくて、むずがゆい感じありました。私が真琴の気持ちに近づいたからかもしれませんが、恋愛模様の場面は良い意味で居心地が悪くて面白かったです。私はこれまで割と重い物を抱えている役が多かったんですけど、真琴のような根が明るい女の子を演じることができてうれしいです(笑)」

 今年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に静御前役で出演。鎌倉時代にあった歌舞「白拍子」を披露する場面が視聴者に強い印象を残した。

 「静御前の人生は劇的で悲劇です。私も踊りも好きだし芝居も好きなので、800年前に、それに近いことをやっていた人の人生をVRで見るような感覚が面白かったです。貴重な経験をさせていただきました」

 令和の時代に時代劇で輝き、しかも殺陣ができる女性は貴重。せっかく得た経験を今後、時代劇シリーズ主演などで生かしてほしいところだ。

 「正直、大変なので…(苦笑)。ただ、強い女の人はいいな、と思うので、いつか再挑戦したいと思う時が来たら、やってみたいです。今回の作品で自分の中に背骨ができました」

 石橋静河という役者の未来がさらに楽しみになる作品が完成した。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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