藤井竜王は連敗しない男 “神話継続”105手で勝利し1勝1敗タイ 主導権握った81手目 

[ 2022年10月23日 05:05 ]

広瀬章人八段に勝利し、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した藤井聡太竜王(日本将棋連盟提供)
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 藤井聡太竜王(20)=王将、王位、叡王、棋聖含めて5冠=が挑戦者に広瀬章人八段(35)を迎える第35期竜王戦7番勝負第2局は22日、京都・仁和寺で2日目が指し継がれ、先手藤井が105手で勝利した。対戦成績を1勝1敗のタイへ戻した。

 これでタイトル戦は通算36勝7敗。一度も連敗がなく「タイトル戦で連敗しない男」という藤井神話を継続した。最近は棋聖戦、王位戦と続けて第1局を落としたが、棋聖戦はそこから3連勝、王位戦は4連勝して防衛した。今回も続けるか注目される。

 2日目昼食休憩まで互角の第2局。ところが終局は午後4時21分と早く、持ち時間8時間のうち藤井は1時間6分、広瀬は1時間33分を余した。昼食休憩明けからの3時間足らず、目の当たりにしたのは藤井の絶妙手だった。

 80手目、自王を頭上で守護する銀を広瀬銀に奪われた。歩を伸ばせばその銀を取り返せるのに、目もくれない。その銀の腹へ金を上がり、1段目の飛車の利きを通した。一時的な駒損だが金銀両取り。真意は銀を取り返すことではなく、広瀬王の守りの要の金を奪いにいくことだった。

 その81手目の着手はわずか2分。事前からの構想にあったことは確かで、長く盤面中央で争った主導権を藤井が握った瞬間だった。

 「序盤から経験のない形になった。苦しい展開が続いたが途中から持ち駒が増えて攻めが狙える形になった」

 4期ぶりの復位を期す広瀬の作戦に苦しんだ。新手や新構想などに贈られる升田幸三賞。その昨年度の受賞手順「[後]3三金型早繰り銀」は右銀を7筋から進めるが、広瀬は6筋から腰掛け銀に構えた。新戦法にさらに改良を加え、勝率上は若干不利な後手番での勝利へ意欲的な指し回しを見せた。

 対して、藤井が手応えを感じたのは、57手目から取れたのに陣形整備を優先し、後回しにした広瀬桂を確保した65手目という。「タイに戻すことができた。しっかり振り返って次局以降につなげていきたい」。初出場した一昨年棋聖戦から継続するタイトル戦10連続制覇の更新へ、第一歩もしるした。第3局は28、29日に静岡県富士宮市で指される。 (筒崎 嘉一)

 ≪広瀬八段、くま最中“先手”も…≫昨年度升田賞の改良版で開幕連勝を狙った広瀬は「基本的に悪い形ですが、あまりマイナスにならないように心掛けたつもり」と一定の手応えを示した。1日目午後のおやつには前期で藤井が注文し、話題になった「くま最中(竜王戦バージョン2022)」を藤井に先駆けて注文する意欲も見せたが実らず。「あまり見どころなく終わってしまった。次局はそうならないように」とも語り、寄せ合いの接戦へ持ち込めなかった2日目午後を悔いた。

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