【スポニチ潜入(1)享栄・東松快征投手】「野球人生の最終的な目標は日本人初のサイ・ヤング賞」

[ 2023年4月4日 09:00 ]

享栄・東松快征
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 スポーツニッポン新聞社では、今年も企画「スポニチ潜入」で、アマチュア野球の有力選手を紙面、公式サイト「スポニチアネックス」、YouTube「スポニチドラフトチャンネル」において取り上げる。第1回は2年秋時点で最速152キロをマークし、高校生左腕では大阪桐蔭・前田悠伍と双璧の評価を受ける今秋ドラフト1位候補の享栄(愛知)・東松快征投手(17)。超高校級“出力”で、剛球にさらなる磨きをかける構えだ。

 捕手のミットにたたきこまれた瞬間の音が違う。乾いた音ではなく、重く、鈍い。グラブをはめた右手を大きく、高く上げる豪快なフォームは「よく似ていると言われます」とうなずくように楽天・松井裕樹をほうふつさせる。そこから繰り出される東松の剛球は、今年のアマチュア球界随一の球威をまとう。

 「自分の強みは自信のあるストレートで、攻めのピッチング、強気のピッチングができるところです。交わすとか、しなやかとかじゃなくて、もう“ドーン”というスタイルが好きなので」

 強じんな肉体が、そのスタイルを可能とする。1メートル78、92キロ。昨秋からMAXで9キロの増量を果たし、ユニホームのパンツがはち切れそうな下半身は、まるで競走馬のよう。鍛え上げた土台の上に、柔らかくスムーズなフォームが乗る。その相乗効果の産物こそが、球威抜群の剛球だ。

 デッドリフト170キロ、左右の握力58キロ…に加えて、特筆すべきは持てる力を最大限に“出力”できる身のこなしだ。物語る数値がある。米国BLAST社提供で、日本国内ではミズノ社が展開するグリップ装着型バットスイング解析システム「BLAST」で計測したバットスピード。従来のスイングスピードとは異なる物差しだが、東松はチーム一の最速127・7キロを計測する。高校生の基準値は95キロで、体の力を最大限にバットへ伝えられないと出せない数値だ。そのメカニズムを投球にも応用し、リリースポイントでパワーを最大出力。その結果、投球回転数もプロの平均約2200回転を大きく上回る約2500回転を計測する。それが、重い球質と抜群の球威を生み出す。

 だから、さらなる高みを見据えることもできる。今年の目標数値には「最速157キロ」と「アベレージ150キロ」を掲げる。もはやプロでもトップレベルの域に至る目標だが、すでに昨秋の愛知大会3回戦・東邦戦でアベレージ148キロを誇った東松にとっては十分に射程圏内と言える。

 昨年12月には鳥取のトレーニング施設「ワールドウィング」を訪れ、初動負荷トレーニングで体の可動域を広げることに重点を置いた。フォームの柔軟性を向上させたことに加え「直球と同じように投げたら少し抜けて若干、落ちていく感じ」のワンシーム・ハーフという新球種も学び、オフに試投を繰り返してきた。直球だけでなく、変化球の精度向上にも余念なし。投球の幅を広げ、「勝てる投手」として高校ラストイヤーに向かう。

 「やっぱり甲子園優勝というのが、自分の目標でもあるんですけど、チームの目標でもあるので、まずは甲子園に出て優勝するということが目標。甲子園優勝して、U18の日本代表に選出していただいて、そこからドラフト1位競合という3つの目標があります」

 3大目標を掲げているが、その冠には「直近の」が付く。すでに野球人としての最大目標を明確に定めているからだ。「野球人生の最終的な目標は日本人初のサイ・ヤング賞。高校に入学した時から大藤先生と一緒に“かなえような”と言ってやってきました」。好きな言葉は、試合用帽子のツバにも記してある「真っ向勝負」。本格派左腕としての王道を突き進み、世界の頂点を望む。(惟任 貴信)

 ◇東松 快征(とうまつ・かいせい)2005年(平17)4月29日、愛知県東海市出身。加木屋小1年から加木屋クラブで野球を始め、加木屋中では東海中央ボーイズに所属。享栄では1年秋からベンチ入りし、2年夏から背番号1。50メートル走6秒1、遠投120メートル。1メートル78、92キロ。左投げ左打ち。

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