天理、敬意の全力野球で21点!笑顔なき5年ぶり夏切符 コロナ禍で主力欠く相手思い… 

[ 2022年7月29日 06:00 ]

第104回全国高校野球選手権奈良大会決勝   天理21-0生駒 ( 2022年7月28日    佐藤薬品スタジアム )

<天理・生駒>試合に勝利し、静かにベンチを出る天理ナイン(撮影・岸 良祐)
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 第104回全国高校野球選手権大会(8月6日から17日間、甲子園)の地方大会は28日、9大会で新たに出場校が決まった。奈良大会では天理が初の決勝に進んだ生駒に大勝し、5年ぶり29度目の出場を決めた。

 空振り三振で締めたエースの南沢佑音(3年)は右の拳を軽く握った。23安打21得点の猛攻でつかんだ5年ぶり29度目の夏切符。感情を爆発させてもいい場面でも天理の選手たちは冷静で、さっと本塁へ整列した。まるで勝者も敗者も存在しないかのようなフィナーレ。相手の思いをくみ取った部員の自発的な行動に、中村良二監督は目頭を熱くした。

 「複雑な思いで試合に入りました。ただ、勝負事で手を抜くことは失礼にあたる。“全力で戦え”と伝えました。あの子たちも生駒さんの不完全燃焼を感じ取っていたのでしょう。選手たちをほめてやりたい」

 準決勝翌日の27日、新型コロナウイルスの影響で生駒に体調不良を訴える選手が複数人出た。決勝の先発オーダーは準決勝から5人も入れ替わり、主戦投手の名前は控えの欄にもなかった。今夏初登板の1年生左腕に対して初回は四球を足がかりに犠打を絡め、3安打で3点を奪った。いかなる状況でも全力を尽くすのが天理の流儀だ。一切手を緩めず、戦後では奈良決勝史上最多21得点。歴代でも3位の高得点で頂点に立った。

 4安打3打点と暴れ回った遊撃手の戸井零士主将(3年)は言った。「生駒さんがベストメンバーじゃないことは分かっていました。試合中は正々堂々とやるのはすごく大事なことですが、終了時はマウンドに集まらずに整列しようと声をかけました。こういう状況でも試合をしていただいてありがたかった」。相手の心情に寄り添った、誇り高い優勝だった。(吉仲 博幸)

 ○…阪神が今秋ドラフト候補の天理・戸井を決勝戦も視察した。3番遊撃で出場し、遊撃や左翼へ痛烈な打球を飛ばし、4安打3打点で貢献。高校通算13本塁打を誇る右の中距離打者で、担当の山本宣史スカウトは「大型の内野手で守備もよくなっている。甲子園でも期待したい」と評価した。

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