「聖地」で積んだ練習成果 「新たなる世紀」へ、古豪・桐蔭(和歌山)3年ぶり8強進出 盤石零封リレー

[ 2022年7月21日 15:42 ]

第104回全国高校野球選手権和歌山大会・3回戦   桐蔭4―0慶風 ( 2022年7月21日    紀三井寺 )

<桐蔭-慶風>桐蔭4回裏1死二、三塁、捕手後逸で三塁走者・西尾が本塁を突くも間一髪アウト。投手・森下、打者・西、球審・村畑(21日、紀三井寺公園野球場)
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 桐蔭の主将・有本健亮(3年)は「今日はいい形で試合に入れた」と振り返った。1回裏、先頭の西哲希(3年)が右中間二塁打。バントで送り、有本自身が低めスライダーをライナーで左越えに運ぶ先制二塁打を放った。2球目、初球、初球とわずか4球で先取点を奪ったのだった。

 矢野健太郎監督(32)から試合前、慶風の主戦右腕・森下祥悟(3年)の変化球を狙おうと指示が出ていた。有本は「変化球でストライクを取りに来るのは分かっていた。積極的にいけた」と狙い通りの一打だった。

 さらに「今日はいい形」と話すのは14日の初戦・那賀戦の反省があった。8―2で勝ったのだが、主将として物足りなさを感じていた。野球部顧問の大松義明教諭が「厳しさを持ったキャプテン」という有本は「厳しいというか、引き締める時は引き締めます」と話す。「確かに初戦ということで緊張もあったかもしれない。それでも思い切りの良さがなかった。反省して、試合前から気持ちを入れていった」

 試合は初戦同様、背番号「5」の右腕・高野東我(とわ=3年)から「1」の左腕・寺田祐太(3年)につないで3安打零封した。

 高野はフォーク、ツーシームと落ちる球を有効に使い、6回2安打無失点と好投した。中学時代は硬式野球の和歌山ボーイズ・キングタイガースに所属。高校進学時は複数の強豪私学からの誘いがあったが「文武両道を実践する桐蔭でやろう」と入試を突破した。

 寺田はチェンジアップに130キロ台中盤のコンビネーションで3回1安打無失点。「指先の感覚を大切にしたい。ボールと仲良くなるというイメージ」と、授業中も左手でボールを握る。
 矢野監督は「投手がよく投げてくれたのが勝因」とたたえた。昨年は3回戦敗退。一昨年はコロナ下の県独自大会で8強だったが、選手権和歌山大会での8強となれば3年ぶりだ。
 旧制和歌山中で、春夏通算36度の全国大会出場、3度の全国優勝を誇る古豪。今年はあらためて伝統を意識する出来事が続いた。

 3月27日にはカナダの日系人野球チーム、バンクーバー朝日軍の継承組織とオンラインで交流した。2日前(19日)には日々練習するグラウンド「野球の聖地・名所150選」に認定された。1922(大正11)年、皇太子(後の昭和天皇)訪問に合わせ建設されたスタンドがある。

 10~12段あるスタンドは「ボックス・ジャンプ」と呼ぶ跳躍練習で今も使う。足腰を鍛える場所となっている。

 「150選」は日本への野球伝来150年を記念したプロ・アマ合同の企画で、高校は3校のみだった。有本は言う。「先輩の方々がつないできたバトンの重さを感じます。あらためて、僕たちがしっかり伝統を引き継いでいかねばならないと思いました」
 この日もネット裏には多くのOBが詰めかけていた。有本は「僕たちが勝つことで喜んでもらえると思いますので」と気を引き締めた。

 朝日軍と対戦したのも、スタンドが完成したのも、ちょうど100年前。世紀を超えた物語である。校歌にある「新たなる世紀(とき)に目覚めて」を地で行く快勝だった。 (内田 雅也)

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