【内田雅也の追球】不運が重なり「二匹目のドジョウ」すくえず 継投に失敗した“魔の7回裏”

[ 2022年7月21日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―5広島 ( 2022年7月20日    マツダ )

<広・神>7回2死一、三塁、二塁手・小幡は野間の打球に飛びつくも及ばず、右前適時打に(撮影・坂田 高浩)
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 「二匹目のドジョウ」は「柳の下にいつもドジョウはいない」から派生したそうだ。一度成功したからといって、再び同じようにうまくいくとは限らない、という意味のことわざである。

 阪神は2点リードの7回裏、「二匹目のドジョウ」を狙って継投策に出た。成功した前夜同様に渡辺雄大ワンポイントから浜地真澄、さらに……と必勝を見込んだ。無死一塁から渡辺は1死を奪って成功。ところが浜地で逆転され、ドジョウをすくえなかった。
 継投失敗と映るが、どうだろう。浜地はほとんど快打されていない。打ち取った当たりが安打になり、さらに外野手の失策が重なった。

 魔の7回裏の不運を並べると、左前ポテン打、三ゴロ間一髪セーフ、右前打捕球ミス、中飛落球……さらに二塁手ジャンプ及ばず、右前テキサス安打と続いた。あれよあれよの4失点だった。

 セイバーメトリクスに「BABIP」という指標がある。本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を示す。(安打-本塁打)÷(打数-奪三振-本塁打+犠飛)で計算する。

 1990年、米国の野球統計家ロバート“ボロス”マクラッケンが提唱した。「投手は打球の結果を制御できない」との仮説から検証し「本塁打を除く打球がアウトになるか否かは投手の責任ではない」と結論づけた。運によるところが大きいというわけだ。

 打球数が増えればBABIPはおおむね3割に収束する。この夜1試合だけだが、浜地のBABIPは・667。不運を示す数字と言えよう。

 ただし、不運を嘆いていてはならない。名人にもなったプロ棋士、米長邦雄は著書『運を育てる――肝心なのは負けたあと』(祥伝社文庫)で勝利の女神に好かれる基準に<謙虚>をあげる。<いかなる局面においても「自分が絶対に正しい」と思ってはならない>。 継投策も配球も反省すべきかもしれない。もちろん、追加点が奪えなかった打線の責任もある。何しろ、今季広島戦は2勝11敗2分けで、1試合平均2・1点、4点以上奪ったのは1度だけだ。

 ただし、米長はこうも書いている。<もう一つは、笑いがなければならない>とある。前を向いて戦えば、幸運も訪れるだろう。=敬称略=(編集委員)

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2022年7月21日のニュース