「今永の2球」に見たDeNAの可能性

[ 2021年8月25日 09:00 ]

DeNA・今永
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 22日の東京ドームは中田翔内野手の「巨人移籍1号」に沸いた。DeNAから見ると、4―1と3点リードの7回、エース・今永昇太投手が中田に2ラン、ウィーラーにソロと初球を連続被弾。瞬時に同点とされた。

 だが、現場で見届けた記者にとって、その「今永の2球」は、三浦DeNAの進むべき道を示した価値ある2球に思えた。

 今永は7回5安打4失点で112球。そのうち直球が66・1%だった。今季、左腕は過去9試合の直球平均比率は48・9%。10戦目で約17%も上昇した。それだけ、直球に切れを感じていたということだ。真っ向勝負の場面も多く見応えがあった。

 中田も2、4回の2打席は直球で封じた。そして「移籍1号」も、高め144キロの直球。被弾後、今永は「序盤からストレートで攻めていたのでアジャストしてくると思った。失投ではなかったがもったいなかった」とコメントした。

 投手の王道である直球勝負を悔いないのがいい。エースらしい姿だし、若手投手陣へのメッセージにもなる。「攻めの投球」は後輩たちに伝播(でんぱ)する。打たれてなお、今永の価値を上げたと記者は思っている。

 次打者ウィーラーへの初球。こちらは132キロのチェンジアップ。この一球をどうこう言うつもりはない。印象深いのは、試合後の三浦大輔監督の言葉だ。「あそこでもうひとつ間を空けてればよかった。ベンチ、自分のミスで申し訳なかった」。

 エースを責めず連携ミスを悔いた。選手との親密な距離感を大切にする番長らしい。この反省は、今後に生きるだろう。2球目の責任を背負った一言に、今永もナインも心を打たれたに違いない。

 「今永の2球」。エースが真っ向勝負を演じ、指揮官は自身のベンチワークを見つめ直した。つかみかけていた白星は手にできなかったが、内容の濃い2球となった。下位に低迷するDeNA。この2人の姿勢が報われる日は必ず訪れるはずだ。(記者コラム・大木 穂高)

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2021年8月25日のニュース