許されないドーピング違反選手の出場 正義は必ず勝つ

[ 2022年2月17日 05:30 ]

フリーに向けて練習するワリエワ(撮影・小海途 良幹)
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 【藤山健二 五輪愛】ワリエワがSPで見せた技術は、確かに素晴らしかった。だが、何の感動もなかった。フィギュアスケートはただのジャンプ大会ではない。氷上で演じる物語を通して、見ている人に自分の思いを伝える競技だ。だから羽生の演技はメダルが獲れなくても世界中の人々の心に響いた。ドーピング違反が判明しながら出場を認められた五輪史上初の選手となったワリエワは、リンクの上で一体何を我々に伝えようとしたのだろうか。

 先日も書いたが、出場を許可したスポーツ仲裁裁判所の判断は明らかに間違っている。「祖父が薬を服用する際に使用したグラスで水を飲んだ」などという説明がまかり通るなら、真面目にドーピング対策をする選手は誰もいなくなってしまう。すでにシニアの選手として活躍しているワリエワをドーピングに関してだけ「要保護者」とするのなら、今やるべきことは試合に出場させることではなく、重大な副作用がないか病院で検査してあげることだろう。心臓疾患がある高齢者用の薬を15歳の少女に飲ませたのだ。こんな非人道的な行為が許されていいはずがない。

 17日のフリーを終えてワリエワが3位以内に入れば、メダル授与式は行わないという。それでは、表彰台に上がるために血のにじむような努力を重ねてきた他の選手たちはどうすればいいのか。IOCは表向き、大会後の「メダル剥奪」の可能性をちらつかせているが、ロシアのプーチン大統領と親しいバッハ会長がどこまで本気でこの問題を追及する気があるのか、残念ながら現時点では懐疑的にならざるを得ない。

 ずっと楽しみにしていたフリーを、この一件のせいで複雑な心境で見なければならないのは本当に悲しい。坂本や樋口には、とにかく悔いのないように頑張ってほしい。スポーツの世界では正義は必ず勝つ。今夜はそう信じて、真面目に一生懸命頑張ってきた選手たちを応援しよう。(特別編集委員)

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