ワリエワの結果はIOC「暫定成績」扱い 3位以内なら表彰式なし…異常事態のまま17日女子フリー

[ 2022年2月17日 05:30 ]

練習するワリエワ(撮影・小海途 良幹)
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 昨年12月のドーピング違反が発覚しながら北京五輪出場継続が認められ、フィギュアスケート女子SPで1位となったカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が、17日のフリーに出場する。国際オリンピック委員会(IOC)は16日、ワリエワの結果は暫定成績になると発表する一方、会見欠席を容認する姿勢を示した。疑惑の15歳が3位以内なら表彰式は行われない。異様な状況で、冬の女王争いが展開される。SPで自己ベストをマークして3位発進した坂本花織(21=シスメックス)ら日本勢もこの日、本番リンクなどで調整した。

 ワリエワは16日、本番リンクで公式練習に参加した。フリー「ボレロ」の曲かけでは冒頭の4回転サルコー、3回転半、4回転トーループからのコンビネーション2本を次々に着氷。3回転半の着氷が乱れ、自身が持つ世界最高得点を8・29点も下回った15日のSPからは見違えるような滑りだった。40分の割り当て時間を5分残して切り上げ、関係者と談笑しながら取材エリアを通過。夜の練習には姿を見せなかった。

 絶対的優位は揺るがないフリーを前に、IOCのアダムス広報部長は、ワリエワがROCの金メダルに貢献した団体と個人の結果は暫定成績として取り扱うと発表した。各国・地域の獲得メダル数にも注釈がつくという。ドーピング違反の予備検体も未分析の状態で今後処分が下される可能性があるためだが、フリーで世界最高得点を更新しても「金メダル獲得」とは言えず、表彰式も行われない。

 義務ではないとはいえ、SP後のワリエワは「気分が優れない」(ROC)との理由で通常3位までが出席する会見を欠席。アダムス広報部長はフリーでも「強要は適切ではない。(出席の)可能性は低いと思う」と容認する考えを示し、公には無言で北京を去る公算が大きい。スポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場を認めたばかりに異例の状況が続いており、ロシアを除く各国から批判が続出。米NBCや韓国のテレビ局は、SPの演技中にコメントをしない放送で抗議姿勢を示した。

 15日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ワリエワからは禁止薬物トリメタジジン以外に、心臓疾患の治療に使用される「ハイポキセン」「L―カルニチン」が検出されたことが明らかになった。ともに禁止物質ではないが、ダイエット効果がある「L―カルニチン」は注射などによる制限値を超えた投与は禁止。心臓への酸素供給を助ける「ハイポキセン」は米国反ドーピング機関(USADA)が最近、禁止薬物指定を訴えて実現しなかった。

 USADAのタイガート委員長は3種類の薬を組み合わせた服用の利点を「持久力の向上、疲労の軽減、酸素消費効率の促進」と説明。世界反ドーピング機関(WADA)は、2種類の薬物検出はトリメタジジンを誤って摂取したとのワリエワの主張と合わないと指摘している。疑惑が深まる中、冬季五輪最高の見せ場であるはずの女子フリーが幕を開ける。

 【ワリエワのこれまで】
 ▼21年12月25日 ロシア選手権女子シングルで優勝。
 ▼22年2月1日 北京入り。
 ▼同7日 団体で五輪の女子競技史上初めて4回転ジャンプを着氷。
 ▼8日 ロシア選手権の検査結果を世界反ドーピング機関(WADA)が報告。禁止薬物のトリメタジジンに陽性反応を示し、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)はワリエワを暫定資格停止処分に。団体戦表彰式は「法的問題」で延期。
 ▼9日 RUSADAの規律委員会に異議申し立て。暫定資格停止処分が解除される。各国メディアがドーピング違反を報じる。
 ▼10日 個人戦へ練習再開。
 ▼11日 ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が大会前のドーピング違反を公表。IOCなどが暫定資格停止処分解除への異議をCASへ申し立て。
 ▼13日 CASがオンライン形式で聴聞会。
 ▼14日 CASが個人戦出場を認める。
 ▼15日 女子SPで首位発進。

 ◇カミラ・ワリエワ 2006年4月26日生まれ、ロシア・カザン出身の15歳。09年にスケートを始め、18年シーズンからトゥトベリゼ・コーチに師事。19~20年シーズンにジュニア・グランプリファイナルと世界ジュニア選手権を制覇。21年からシニアに参戦し、スケートカナダやロシア杯、欧州選手権で優勝。SPの90.45点、フリーの185.29点、合計272.71点はいずれも歴代世界最高記録。1メートル60。

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