【鎌倉殿の13人 秘話4】末永監督が語る畠山重忠・中川大志の矜持“ある行動を拒否”「納得いきません」

[ 2022年12月13日 12:00 ]

「鎌倉殿の13人」最終週インタビュー(4)演出・末永創監督

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第36話。鶴ヶ峰。壮絶な殴り合いの末、畠山重忠(中川大志・上)は北条義時(小栗旬)にトドメを刺さず…(C)NHK
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 脚本・三谷幸喜氏(61)と主演・小栗旬(39)がタッグを組み、視聴者に驚きをもたらし続けたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は今月18日、ついに最終回(第48回)を迎える。最終週インタビュー第4回は演出の末永創監督。撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。最終回は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」が描かれる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。

 末永監督にとって最も印象に残るのは「畠山重忠の乱」(1205年、元久2年)を活写した第36回「武士の鑑」(9月18日)、畠山重忠(中川大志)と北条義時(小栗)の壮絶な殴り合い。時代劇異例の“肉弾戦”はSNS上で大反響を呼んだ。

 合戦シーンは今夏に3日間、静岡県富士宮市で大規模ロケを敢行。馬から落ちた後の重忠と義時の一騎打ちは最終日のラストに撮影を行い、中川はこれをもって自身のクランクアップを迎えた。

 放送前にインタビューに応じた中川は「台本が上がってきたタイミングで、このシーンについて小栗さんと一緒にお話をさせていただく機会がありまして。『きれいな立ち回りじゃなく、泥臭いものにしたい』というお話を頂いて、僕も『まさしく同じ考えです』と。畠山と義時は10代の頃からの幼なじみで、いくつもの戦を共に乗り越えてきた旧知の仲。『そんな2人が、最後は子どものケンカみたいに泥臭く戦えたらいいよね。オレは畠山重忠という男に、ここで思い切りぶん殴られたいんだよね』と小栗さんの思いもうかがって、そこから末永監督、アクションチームと色々なパターンの動きを練って、リハーサルを重ねて、あの殴り合いに行き着きました」と述懐。

 実は重忠が地面から拾った大きめの石で義時を殴るというアクションも予定されていたが、末永監督は「ロケが進む中、中川さんから『畠山が石を使うのは、やっぱり納得いきません。石は使わない方がいいと思うんです』と提案を頂いて。もう畠山次郎が憑依しているぐらいの熱意に僕も打たれまして、中川さんのプランで撮影をしました。ロケの場所が富士山麓だったので、火山灰のような地面。少し動いただけでも土煙が舞い上がってしまって、お風呂に入っても、翌朝に鼻をかむと、まだ土が出てくるぐらいでした。猛暑もあって、大変なロケでしたけど、まさに武士の鑑が乗り移った中川さんと、次の日まで鼻の中から出てくる土が、一番の思い出として残っています」としみじみ振り返った。

 三浦義村役の山本耕史が胸筋を披露し、話題を集めた第21回「仏の眼差し」(5月29日)と第42回「夢のゆくえ」(11月6日)も末永監督の担当。第42回は、由比ヶ浜の砂浜にめり込んだ3代鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)と八田知家(市原隼人)の“夢の唐船”を引くシーン。知家と義村の“肉体美競演”が話題を集めた。

 「義村が着物を脱いで上半身裸になるのは、21回も42回も台本に書いてあるんですよ。ちょうど42回の撮影の時に、たまたま三谷さんがNHKにいらっしゃっていて。義村が進水式の観覧席で脱いでいるシーンも堪能されていました。理由までは台本に書かれていないんですけど、僕の解釈としては、上半身裸で船を引く八田を目にした義村が高揚してしまったんじゃないかと。義村も船を引きに行って戻ってきた、ということはないと思いますね」

 11月下旬にインタビューに応じた山本も、八重(新垣結衣)が川に流されてしまった第21回について「僕も一応、三谷さんに『これ、脱ぐ必要はあります?』と確認はしたんです。川に入るなら、袴を脱ぐか、袴をまくって上げるか、ですからね。そうしたら、三谷さんは『重すぎるシーンなので、お客さんの気を一回、義村の裸で(八重から)そらしたい、視線を(八重から)誤魔化したいんだ』と。そこまで計算されているのか、と。お見事すぎますよね。本当に凄いと思いました」と秘話を明かし、舌を巻いた。

 ◇末永 創(すえなが・そう)1994年、NHK入局。東京・エンターテインメント番組部(当時)を振り出しに、秋田放送局を経て、2002年からドラマ部。大河ドラマに関わるのは13年「八重の桜」(演出・10話分)、15年「花燃ゆ」(演出・14話分)に続いて3作目。「鎌倉殿の13人」は第4回「矢のゆくえ」(1月30日)、第7回「敵か、あるいは」(2月20日)、第12回「亀の前事件」(3月27日)、第16回「伝説の幕開け」(4月24日)、第21回「仏の眼差し」(5月29日)、第27回「鎌倉殿と十三人」(7月17日)、第33回「修善寺」(8月28日)、第36回「武士の鑑」(9月18日)、第42回「夢のゆくえ」(11月6日)、第46回「将軍になった女」(12月4日)を担当した。

 =最終週インタビュー(5)に続く=

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