源公、寅さんの元へ…佐藤蛾次郎さん急死 コミカルな演技で人気 目立った傷などなし

[ 2022年12月13日 04:45 ]

俳優の佐藤蛾次郎さん
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 人気映画シリーズ「男はつらいよ」の源公役をはじめ多くの映画やドラマで活躍した俳優の佐藤蛾次郎(さとう・がじろう、本名忠和=ただかず)さんが10日までに、虚血性心不全のため東京都世田谷区の自宅で死去していたことが12日、分かった。78歳。大阪府出身。葬儀はこの日、近親者のみで営まれた。喪主は長男で俳優の佐藤亮太(さとう・りょうた)。愛すべきキャラクターだった源公の突然の訃報に、寅さんファミリーをはじめ芸能界に悲しみが広がった。

 警視庁玉川署などによると、佐藤さんは10日午前10時過ぎ、自宅を訪れた亮太が浴室で風呂に漬かった状態で動かなくなっているのを発見した。同25分ごろに119番したが、直後に現場で死亡が確認された。遺体に目立った傷などはなかった。

 佐藤さんは妻が2016年に亡くなって以降、一人暮らしだったが、頻繁に家族が訪れていた。持病などは特になく、9日も亮太が顔を出していたという。関係者によると、亮太は最近「(父親の)調子が良くないと話していた」という。

 佐藤さんは大阪府高石市に生まれ、9歳の時に大阪の朝日放送児童劇団に入団。61年にテレビドラマ「神州天馬(人ベンに峡の旧字体のツクリ)」で泣き虫蛾次郎役を演じたことから「蛾次郎」を芸名にした。68年、テレビドラマ「男はつらいよ」に出演。渥美清さん演じる車寅次郎の父親違いの弟役だった。69年の映画化に際し、オーディションで柴又帝釈天題経寺の寺男・源公(本名は源吉)役を射止めた。

 アフロヘアに法被がトレードマーク。寅さんを「兄貴」と慕い、寅さんも「源公」と呼んで可愛がった兄弟分的な関係。「とらや」の面々からも「源ちゃん」と呼ばれて親しまれた。寅さんの旅に随行しながらかばん持ちをしたり、時には散々な目に遭わされることもあったが、2人のテンポの良いやりとりはシリーズの代名詞となった。撮影前に交通事故に遭い参加できなかった第8作「寅次郎恋歌」を除く19年「お帰り寅さん」までの全作品に出演し、シリーズに欠かせない存在だった。

 19年、帝釈天で行われた映画「任(人ベンに峡の旧字体のツクリ)学園」のヒット祈願では「寅さんで50年来ていますが、(境内の)壇上に上がったのは初めてです」と感慨深げに話していた。

 ほかにも映画「戦国自衛隊」「人間の証明」「罪の声」、ドラマ「服部半蔵 影の軍団」「柳生一族の陰謀」などの話題作に出演し、名脇役として活躍。特に時代劇ではかつらをかぶらないことも多く、コミカルな演技で人気を集めた。

 ◇佐藤 蛾次郎(さとう・がじろう、本名佐藤忠和=ただかず)1944年(昭19)8月9日生まれ、大阪府出身。大阪朝日放送児童劇団に入り、1954年ラジオドラマ「風の又三郎」でデビュー。出演作にドラマ「科捜研の女」「JIN―仁―」など。72年元新劇女優の和子夫人と結婚し、1男1女をもうけた。1メートル55。

 ◇虚血性心不全 心臓のポンプ機能が低下し、体に送り出される血液量が少なくなる状態。呼吸困難になり最悪の場合は死に至る。原因は動脈硬化。

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